69〕 〈参考〉建物状況調査

宅建業法の平成28年改正によって、建物の売買・交換および賃貸に関して、取得しまたは借りようとしている建物が既存の建物であるときには、重要事項説明において説明するべき事項として、建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要が追加されました(同法第35条第1項第6号の2。施行:平成30年4月1日)。

 

建物状況調査とは、既存住宅について、目視、計測等によって、基礎、外壁等の部位毎に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の有無を調べる調査です。国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が実施します(講習を修了していない建築士や検査事業者が実施する調査は、宅地建物取引業法に基づく建物状況調査には当たらない)。調査者は調査当日、有資格者であることを証明できるもの(カード型の修了証等)を携帯することになっています。提示を依頼することで有資格者かどうかを確認することができます。

 

建物状況調査の対象となるのは既存の住宅です。既存の住宅とは、①人の居住の用に供した住宅、又は②建設工事の完了の日から1年を経過した住宅、のいずれかに該当するものをいいます。戸建て住宅、共同住宅(マンションやアパート等)共に対象となります。賃貸住宅も対象です。店舗や事務所は建物状況調査の対象ではありません。

 

建物状況調査の対象となる住宅は、人の居住の用に供する家屋に該当するものです。住宅に該当するかどうかは、不動産登記上の用途ではなく、使用の実態に基づいて判定されます。

 

店舗併用住宅の場合、住宅部分(店舗部分との共用部分を含む)が基本的な建物状況調査の対象です。非居住用部分と共用の玄関や通路なども住宅となります。空き家については、除却することが確定しているなど将来的にも居住の用に供される見込みのないものは住宅に該当しません。

 

既存住宅を売買する場合に、必ず建物状況調査を実施しなければならないものではありませんが、建物状況調査を行うことで、調査時点における住宅の状況を把握した上で、売買等の取引を行うことができ、取引後のトラブルの発生を抑制することができ、また、既存住宅購入後に建物状況調査の結果を参考にリフォームやメンテナンス等を行うことができるとされています。住宅瑕疵担保責任保険法人の登録を受けた検査事業者の検査人が建物状況調査を実施し、建物状況調査の結果、劣化・不具合等が無いなど一定の条件を満たす場合には、既存住宅売買瑕疵保険に加入することができます(既存住宅売買瑕疵保険に加入するための検査の有効期限は1年)。

 

建物状況調査の実施には費用がかかります。建物状況調査の費用については、基準の設定はなく、各調査実施者により費用は異なるので、建物状況調査に要する費用については、各調査実施者に問い合わせる必要があります。費用負担は、建物状況調査の依頼者(売主、購入希望者など)が負担するのが一般的と考えられます。

現に居住中の住宅であっても、建物状況調査を実施することは可能です。

購入希望の既存住宅について建物状況調査を実施する場合には、あらかじめ売主

の承諾を得る必要があります。複数の物件について建物状況調査を実施することを希望する場合には、それぞれの物件について、建物状況調査を実施することもできます。

 

建物状況調査を依頼した場合に準備する資料としては、調査対象住宅の設計図書、耐震性に関する書類(新築時の確認済証、住宅性能評価書等)等が考えられます。また、共同住宅の場合は、これらの書類に加え、管理規約、長期修繕計画の写し等の書類について、管理組合に請求して準備をする必要がある場合もあります。

 

建物状況調査結果の有効期限はありませんが、時間の経過とともに建物の現況と調査結果との間に乖離が生じることが考えられます。国土交通省令において、重要事項説明の対象となる建物状況調査は、調査を実施してから1年以内のものとされています(宅地建物取引業法施行規則第16条の2の2)。