70〕 〈参考〉解除について

1.手付解除

売主および買主はいずれからでも、相手方が契約の履行に着手していない段階であれば、次の方法により、随時契約を解除することができます。

●売主が解除する場合は、売主は買主に対し、既に受領した手付金の倍額を支払って、解除の通知をする。

●買主が解除する場合は、買主は売主に対し、既に支払った手付金を放棄して解除の通知をする。

なお、相手方が契約の履行に着手したか否か判断が難しいため、契約締結日から一定期日を定め、その日までに限り手付解除を認める合意をすることもあります。

この場合でも、この日の前に相手方が契約の履行に着手したら、もはや手付解除はできません。こうした合意は、売主が宅建業者の場合には認められません。

 

2.融資利用の特約による解除

買主が代金の支払を融資を受けて行なうことが予定されている場合に、その融資が得られなければ買主は解除することができるとする特約が融資利用の特約による解除です。この解除は、予定された融資が予定された時期までに融資の見込みがたたない場合に、買主が定められた解除期間内に解除権を行使して行います。

解除すると、売主は受領済みの金員(手付金、中間金など)を全額買主に返還しなければなりません。

 

3.契約違反の場合の解除

売主または買主が売買契約で定めた義務を履行しない場合には、相手方はその履行を催告のうえ(履行が不可能な場合は催告不要)、それでもなお履行がされない場合には、一方的にその売買契約を解除することができます。

その場合、解除した者は履行をしなかった者に対して、損害賠償の請求をすることができます。この損害賠償の範囲は実損害が原則ですが、売買契約において「損害賠償額の定め」をしていた場合には、実損害が「損害賠償額の定め」を超える場合でも、また、それより少ない場合でも実損害にかかわらず、「損害賠償額の予定」に従った額だけしか請求できません。

なお、売主が宅地建物取引業者であるときは、宅建業法により、「損害賠償額の定め」の額と「違約金」の額の合計が売買代金の20%以下でなければなりません。

 

4.引渡前の滅失等の場合の解除

売買対象不動産が、その引渡前に売主・買主のいずれの責めにもよらない事由(天変地異等)で、滅失または毀損した場合、民法上の原則は、買主がそのリスクを負担することとなっています(危険負担の債権者主義といいます)。

しかし、これを徹底するのは合理性に欠けるとの考え方から、実務では、双方から契約を解除することができるとの特約をすることがあります。

この場合には、解除により売主は、受領済みの金員全額を買主に返還しなければなりません。

 

5.譲渡承諾の特約による解除

賃借権である借地権を第三者に譲渡するには、地主の承諾が必要です。無断で譲渡すれば、借地契約の解除事由とされています。

そこで、この借地人がこの借地権を第三者に譲渡する契約を行う場合に、一定期日までに地主の承諾が得られなければ、この譲渡契約を解除するとする特約をすることがあります。

この解除がされた場合には、譲渡人である借地人は、受領済みの金員を全額譲受人に返還しなければなりません。

 

6.割賦販売の場合の解除

宅地建物取引業者が自ら売主となって行なう割賦販売契約(代金の支払が、対象不動産の引渡後1年以上の期間にわたり行なわれ、かつ、2回以上に分割される契約)について、買主が割賦金の支払を怠った場合には、売主は、上記3のような通常の契約違反による解除はできず、必ず、買主に対し書面による催告をし(この催告期間は30日以上としなければなりません)、その期間内に支払がされないときにはじめて、買主の支払遅滞を理由とする契約解除が認められます。

これに反する特約は無効です。

 

7.買換え特約による解除

買主が、売主からある物件を購入するにあたり、買主が現在住んでいる住居を第三者に一定期間内に売却できることを条件とした場合に、その期間内に現在の住居を売却できなかったときには、買主は、売主との物件の購入(売買)契約を解除できるとの特約が買換え特約による解除です。

これにより解除した場合、売主は、受領済みの金員を全額買主に返還しなければなりません。