7〕 景観法(5の3)

この法律は、都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造および個性的で活力のある地域社会の実現を図ることを目的としています。

この目的を達成するため、景観行政団体(地方自治法の指定都市、中核市、その他の区域では都道府県または一定の市町村)は、市街地または集落を形成している地域等における、現にある良好な景観を保全する必要があると認められる土地の区域等、一定の条件に該当する土地の区域について、「景観計画」を定めることができるとされています(法8条1項)。

【法16条1項および2項(景観区域内における行為の届出等)】

この景観計画が定められた区域を「景観計画区域」といい、この区域内において、次の行為をしようとする者は、あらかじめ、その行為の種類、場所、設計または施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を、景観行政団体の長に届け出なければなりません(法16条1項)。

①建築物の新築、改築、移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩の変更

②工作物の新設、増築、改築、移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩の変更

③都市計画法に規定する開発行為

④その他景観行政団体が条例で定める行為

また、この届出をした者は、その届出事項のうち、国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を景観行政団体の長に届け出なければなりません(法16条2項)。

【法22条1項(景観重要建造物の現状変更の規制)】

景観重要建造物として指定された建造物については、景観行政団体の長の許可を受けなければ、その増改築、模様替え等の現状変更をしてはなりません。

 

(解説)

景観法では、景観計画区域内の良好な景観の形成に欠かせない重要な建造物について、景観行政団体の長が、当該建造物の所有者の意見を聴いて、「景観重要建造物」として指定できることとしています(法19条1項、2項)。

そして、何人も景観行政団体の長の許可を受けなければ、景観重要建造物の増築、改築、移転もしくは除却、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩の変更をすることはできません。

ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他政令で定める行為および非常災害のために必要な応急措置は、例外的に行なうことができます(法22条1項)

【法31条1項(景観重要樹木の現状変更の規制)】

景観重要樹木として指定された樹木については、景観行政団体の長の許可を受けなければ、その伐採または移植をしてはなりません(法31条1項)。

 

(解説)

景観法では、景観計画区域内の良好な景観の形成に欠かせない重要な樹木について、景観行政団体の長が、当該樹木の所有者の意見を聴いて、「景観重要樹木」として指定できます(法28条1項)。

そして、何人も、景観行政団体の長の許可を受けなければ、景観重要樹木の伐採または移植をすることはできません。

ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他政令で定める行為および非常災害のため必要な応急措置は、例外的に、行なうことができます(法31条1項)。

【法41条(管理協定の効力)】

景観行政団体等は、景観重要建造物または景観重要樹木の所有者と管理についての協定を締結することができますが、この管理協定は、その公告があった後に当該協定建造物または協定樹木の所有者になった者にも効力がおよびます(法41条)。

 

(解説)

景観行政団体または景観整備機構(景観行政団体の長が指定した民法上の公益法人またはNPO法人)は、景観重要建造物または景観重要樹木の適切な管理のため必要があると認めるときは、当該建造物または樹木の所有者と、管理の方法等を定めた協定(管理協定)を締結して管理を行なうことができます(法36条1項)。

管理協定は、縦覧、認可、公告の手続を経て制定されますが、公告があった管理協定は、その実効性を確保するため、公告後において当該協定建造物または協定樹木の所有者となったものに対しても、その効力が及ぶものとされています(法41)。

【法63条1項(景観地区内における建築物の建築等の制限)】

景観地区内において建築物の建築等をしようとする者は、あらかじめ、その計画につき市町村長の認定を受けなければなりません(法63条1項)。

【法72条1項(景観地区内の工作物の設置の制限)】

市町村は、景観地区内の工作物について、政令で定める基準に従い、条例で、その形態意匠の制限、高さの最高限度もしくは最低限度または壁面後退区域における工作物の設置に係る制限を定めることができます(法72条1項)。

【法73条1項(景観地区内における開発行為等の制限)】

市町村は、景観地区内における開発行為について、政令で定める基準に従い、条例で、良好な環境を形成するため必要な規制をすることができます(法73条1項)。

【法75条1項(準景観地区内における行為の規制)】

市町村は、準景観地区(都市計画区域および準都市計画区域外の景観計画区域のうち、相当数の建築物の建築が行われ、現に良好な景観が形成されている一定の区域について、市町村が指定する地区)内における建築物等について、景観地区内に対する規制に準じて、条例で、良好な景観を保全するため必要な規制をすることができます(法75条1項)。

【法75条2項(準景観地区内における開発行為等の制限)】

市町村は、準景観地区内における開発行為等について、条例で良好な景観を保全するため必要な規制をすることができます(法75条2項)。

【法76条1項(地区計画等の区域内における建築物等の形態意匠の制限)】

市町村は、地区計画等の区域内における建築物等の形態意匠について、条例で、当該地区計画等において定められた建築物等の形態意匠の制限に適合するものとしなければならない旨を定めることができます(法76条1項)。

【法86条1項(景観協定の効力)】

景観計画区域内の一団の土地の所有者および借地権者は、その全員の合意により「景観協定」を締結することができますが、この景観協定は、その公告があった後に当該景観協定区域内の土地所有者または借地権者となった者にも効力がおよびます。

 

(解説)

景観計画区域内の一団の土地の所有者および借地権者は、その全員の合意により、当該土地の区域における良好な景観の形成に関する協定(景観協定)を締結することができます(法81条1項)。

景観協定は、縦覧、認可、公告の手続を経て制定されますが、認可の公告のあった景観協定は、公告後に当該景観協定区域内の土地所有者または借地権者となった者に対しても、その効力が及ぶものとして、その実効性を担保しています(法86条1項)。

【法90条4項(1人の所有者が設定した景観協定の効力)】

景観計画区域内の一団の土地を単独で所有している者も、景観行政団体の長の認可を受けて、当該土地の区域について景観協定を定めることができますが、認可を受けた景観協定は、認可の日から3年以内に2人以上の土地所有者および借地権者が存することとなったときから、一般の景観協定と同一の効力を有する景観協定となります(法90条4項)。

 

(解説)

景観計画区域内の一団の土地で、1人の所有者以外に土地所有者または借地権者が存しないものの所有者は、良好な景観の形成のため必要があると認めるときは、景観行政団体の長の認可を受けて、当該土地の区域を景観協定区域とする景観協定を定めることができます(法90条1項)。

この景観協定は、認可の日から3年以内において当該景観協定区域内の土地に2人以上の所有者または借地権者が存することとなったときから、一般の景観協定と同一の効力を有する景観協定となります(法90条4項)。