2〕 建築基準法(2)
建築基準法は、国民の生活と財産の基盤である建築物およびその敷地を保護するために、「建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低限の基準」を定めています。
この法律は主として、①建築に関する手続、②個々の建築物の敷地、構造、設備に関する全国一律の基準、③主に都市計画区域内および準都市計画区域内の一定の地域ごとの、建築物の敷地、構造、設備に関する基準に分けられています。重要事項の説明は③の点が中心となっています。
【法39条2項(災害危険区域内における建築制限)】
建築基準法は、安全性、防災および衛生という観点から、法律の規定、これに基づく命令もしくは条例の規定は、すべての建築物に共通する基準を考えていますが、地方独特の気候・風土によっては特殊の材料、工法または規制を必要とすることがあります。
このような場合には、地方公共団体の条例によって必要な制限を設けることができるということを法律に定めておく趣旨の規定です。
(解説)
地方公共団体は、津波、高潮、出水、がけ崩れ等の危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができます。具体的な規制は、区域によって異なりますが、住宅の建築の禁止または建築制限で必要なもの、その他を条例で定めています(法39条1項・2項)。現在、大半の県と府および30以上の市町村で定められています。
【法43条(敷地等の道路等に接する長さ等の制限)】
都市計画区域および準都市計画区域内では道路に接していれば、どんな土地でも建築することができるというわけではありません。建築基準法は、防災、安全および衛生の観点から道路と敷地の関係の原則を定めています。
(解説)
1.接道義務
建築物の敷地は、道路(次の①②の道路を除きます)に2メートル以上接しなければなりません(法43条1項)。
①自動車のみの交通の用に供する道路
②高架の道路その他の道路であって、自動車の沿道への出入りができない構造のものとして政令で定める基準に該当するもの(これを「特定高架道路等」といいます)で、地区計画の区域内のもの
2.接道義務の緩和
接道義務は、次の建築物には適用されません(法43条2項)。
①その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの
②その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
3.条例による制限の付加
建築物の敷地と道路の関係については、建築基準法の規定だけでなく、地方公共団体の条例で必要な制限を付加することができます(法43条3項)。
建築物の用途、規模の特殊性により建築基準法の原則規定(法43条1項)だけでは、避難または通行の安全の目的を十分に達しがたい場合があります。この場合の措置として、特殊建築物、階数が3以上の建築物等については、特に制限を付加できるとするものです。
4.建築基準法に規定する「道路」
都市計画区域および準都市計画区域内において、建築物が接していなければならない「道路」とは、次の①から⑥のいずれかに該当し、原則として4メートル以上のものをいいます(法42条1項・2項)。
ただし、例外として⑥のみは4メートル未満のものをいい、これらの他、とくに指定する区域では6メートル以上のものをいいます。
①道路法による道路
②都市計画法、土地区画整理法などにより設けられた道路
③都市計画区域および準都市計画区域に編入された際、現に存在する道
④道路法、都市計画法、土地区画整理法などにより設けられる計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの
⑤政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの
⑥都市計画区域および準都市計画区域への編入時に、建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁が指定したもの(「2項道路」と呼ばれています)。この場合、原則としてその道路の中心線から水平距離2メートルの線(6メートル区域として指定した区域では3メートルの線(支障のない場合は2メートルの線))をその道路の境界線とみなされます(法42条2項)。
ただし、当該道路がその中心線から水平距離2メートル未満で、がけ地、川、線路敷、その他これらに類するものに沿う場合においては、当該がけ地等の側の境界線およびその境界線から道の側に水平距離4メートルの線をその道路の境界線とみなされます。
また、特定行政庁が6メートル区域として指定した区域では、現況が4メートル以上6メートル未満の場合には、その現況の幅員で境界線とされ、さらにそのほかに、現況幅員が4メートル未満のとき、中心線から3メートルの線ではなく、2メートルの線を境界線とみなされます(法42条4項・5項)。
【法43条の2(4メートル未満の道路にのみ接する建築物に対する制限の付加)】
上記「4.建築基準法に規定する道路」のとおり、法42条2項に該当する道路については、原則としてその中心線から水平距離2メートルの線をその道路の境界線とみなしますが、特定行政庁が土地の状況によりやむを得ないものとして指定した道路については、2メートル未満であってもその指定した線(ただし最低1.35メートル以上は必要です)を道路境界線とみなすことができます。
なお、道路の反対側にがけ地、川、線路敷地等がある場合には、当該がけ地等の境界線からの水平距離を4メートル未満、2.7メートル以上の範囲で定めることになります(法42条3項)。
この水平距離の線が別に定められている場合において、地方公共団体は、交通上、安全上、防災上または衛生上必要があるときは、当該道路にのみ2メートル以上接する建築物について、条例で、その敷地、構造、建築設備または用途に関して必要な制限を付加することができます(法43条の2)。
(解説)
密集市街地において、その敷地が接する道路幅員が4メートル未満のものについても、法42条3項により指定がある場合には、耐火建築物等への任意の建替の促進を図るため、その道路にのみ接し、その接道部分が2メートル以上確保される建築物については、構造や用途等の制限を付加することにより建築物の安全性、防火性等を確保しようとする趣旨の規定です。
なお、都市計画区域および準都市計画区域内の建築物は、原則として道路に2メートル以上接しなければ建築物を建築することはできませんが、特殊建築物、階数が3以上の建築物、窓がない等の政令で定める居室を有する建築物または延べ面積1000平方メートルを超える建築物の敷地については、敷地が道路と接する長さ等について、地方公共団体の条例で必要な制限を付加することができ、さらに本条で構造や用途等の制限を付加することができます(法43条1項・2項・3項、43条の2)。
【法44条(道路内の建築制限)】
道路は、人の通行のほか、建築物の安全・防災・衛生などのために欠かせない空間です。そのために、道路内の建築制限の規定があります。
(解説)
建築物または敷地を造成するためのよう璧は、原則として、道路内または道路に突き出して建築・築造してはならないとされています(法44条1項)。
ただし、次の①から④のいずれかに該当するものは、例外として建築等ができます。
①地盤面下に設ける建築物
②公衆便所、巡査派出所その他これらに類する公益上必要な建築物で、通行上支障がないもの
③地区計画の区域内の自動車のみの交通の用に供する道路または特定高架道路等の上空または路面下に設ける建築物のうち、当該地区計画の内容に適合し、かつ、政令で定める基準に適合するものであって、特定行政庁が安全上および衛生上支障がないと認めるもの
④公共用歩廊その他政令で定める建築物で特定行政庁が安全上、防火上および衛生上他の建築物の利便を妨げ、その他周囲の環境を害するおそれがないと認め許可したもの
【法45条1項(私道の変更または廃止の制限)】
私道は接道義務の関係から勝手に廃止したり変更したりできません。
(解説)
都市計画区域内においては、私道の変更または廃止によって、その道路が建築物の敷地の接道義務に抵触することとなる場合は、特定行政庁はその私道の変更または廃止を禁止または制限することができます(法45条1項)。
【法47条(壁面線による建築制限)】
道路と類似の制限として壁面線の指定があります。
特定行政庁は、街区内における建築物の位置を整えて、街区の環境を向上させるために必要がある場合には、建築審査会の同意を得て、壁面線を指定することができます(法46条1項)。
(解説)
壁面線が指定されると、建築物の壁やこれに代わる柱または高さ2メートルを超える門、塀は、この壁面線を越えて建築することはできません(法47条)。
ただし、地盤面下の部分または特定行政庁が許可した歩廊の柱その他これに類するものについてはこの限りではありません(法47条)。
【法48条1項~12項(88条2項において準用する場合を含む)(用途地域内の建築物の用途の制限)】
都市計画で定める地域地区の1つに用途地域があります。都市計画を実現するため、建築基準法では、この用途地域内での建築物の用途を制限して、建築することができるものとできないものとを定めています。
(解説)
建築基準法48条1項~12項および別表2において、具体的に建築物の用途の制限が定められています。これを一覧表にすると次ページの表「用途地域内の建築物の用途制限の概要」のとおりです。
ただし、特定行政庁が、用途地域の目的を害するおそれがないと認め、または公益上やむを得ないと認めて許可した場合は、これに限らず建築することができます。
この特定行政庁の例外的許可は、一度この許可を受けた建築物の増築、改築または移転(政令で定めるものに限ります)について再度許可するときには、聴聞および建築審査会の同意は不要とされています(法48条13項)。
なお、用途地域内の建築物の制限は、製造施設、貯蔵施設、遊戯施設等政令で定める工作物についても準用されます(法88条2項)。
【法49条(88条2項において準用する場合も含む)(特別用途地区内における建築物の用途の制限)】
特別用途地区は、用途地域における制限を補完すべく特別に定めるものですから、原則的には用途地域の制限をさらに強化するものとなります。
(解説)
1.地方公共団体による制限付加
特別用途地区においては、前記の用途地域の制限のほか、とくに特別用途地区の指定の目的のためにする建築物の制限または禁止に関して必要な規定は、地方公共団体の条例で定めます(法49条1項)。
2.国土交通大臣の承認による制限緩和
特別用途地区内においては、地方公共団体は、その地区の指定の目的のために必要と認める場合においては、国土交通大臣の承認を得て、条例で、用途地域における用途の制限を緩和できます(法49条2項)。
なお、製造施設等一定の工作物については、用途地域の制限と同様に、特別用途地区内の制限も準用されます(法88条2項)
【法49条の2(特定用途制限地域内における建築物の用途の制限)】
特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除きます)内において、特定の用途の建築物の制限を行なう地域です。
(解説)
特定用途制限地域では、制限すべき特定の建築物その他の工作物の用途の概要が都市計画に定められます(都市計画法8条3項2号ホ)。用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除きます)内において、良好な環境の形成または保持のため、その地域の特性に応じて合理的な土地利用が行なわれるよう、特定の用途の建築物・工作物についての用途制限が定められます(同法9条14号)。
そして、具体的な建築物の用途制限は、地方公共団体の条例によって定められます(建築基準法49条の2、令130条の2)。
【法50条(88条2項において準用する場合を含む)(用途地域等における建築物の敷地等に関する制限)】
用途の制限だけではなく、その敷地または建築設備に関しても地方公共団体の条例で制限を付加することがあります。
(解説)
用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域内または都市再生特別地区内における建築物の敷地、構造または建築設備に関する制限で当該地区または地区の指定の目的のために必要なものは、地方公共団体の条例で定めます(法50条)。
【法52条1項~15項(88条2項において準用する場合を含む)(容積率の制限)】
都市計画法との関係から集団規定としての代表的な制限がこの容積率の規定です。容積率としての敷地の広さと建築物の大きさの関係は、都市計画において用途地域などの目的に応じて定め、具体的な適用については、建築基準法において定めることになっています。
建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合のことを、「容積率」といいます(法52条1項)。
(解説)
1.容積率の指定
容積率は、原則として次の表の地域区分により定められている数値を超えることはできません(法52条1項、令135条の14)。
都市計画において、これらの数値のうちからどれか1つの限度を指定します。ただし、高層住宅誘導地区内にあり、かつ、住宅部分の床面積が3分の2以上の建築物については、指定容積率の1.5倍以下の範囲で都市計画において定められます(法52条1項5号)。
容積率は、同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計について適用されます。
(注)「延べ面積」とは、建築物の各階の床面積を合計した数値をいいます。ただし、自動車または自転車の駐車のための床面積部分は、全体の床面積の5分の1までは「延べ面積」の計算から除外することができます(令2条1項4号・3項)。
2.前面道路の幅員による容積率の制限
環境および防災などの観点から、幅員の狭い道路では、上記表のうち都市計画で指定された容積率をさらに制限することがあります。
容積率の限度表
容積率の限度は、都市計画において、用途地域とあわせて定める上記表の容積率以下であり、かつ、建築物の前面道路の幅員が12メートル未満である場合においては、その前面道路の幅員の数値に一定率を乗じた数値以下でなければなりません(法52条2項)。
また、法42条2項に該当する道路は、原則としてその中心線から水平距離2メートルの線(反対側が川等の場合は反対側から4メートルの線)をその道路の境界線とみなすため、道路の幅員は4メートルとして容積率の計算をすることになります。この場合においては、道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地は、敷地面積に算入しません(法42条2項、令2条1項1号)。
ただし、4メートル未満であっても、特定行政庁がその現況幅員を道と認めた場合には、現況幅員により容積率を計算することがあります(法42条3項)。
(注2)
この基準容積率と都市計画で指定した容積率(前表)とを比較して、どちらか小さい容積率、すなわち厳しい数値に制限されることになります。
また、前面道路が2以上あるときは、その幅員の最大の道路を前面道路とします(法52条2項)。
3.前面道路の幅員による容積率の緩和
(1)特定道路による緩和
建築物の敷地が、幅員6メートル以上12メートル未満の前面道路に接する場合に、当該前面道路に沿って70メートル以内で、幅員15メートル以上の道路(これを「特定道路」といいます)に接続する場合、この特定道路までの延長距離に応じて定められる数値を当該前面道路の幅員に加算して得られた数値が、道路幅員の数値とみなされ、これに10分の4または10分の6(10分の8)を乗じて容積率の限度を計算します(法52条9項)。
特定道路までの延長距離に応じて定められる数値は、これをWa、前面道路の幅員をWr、特定道路までの距離をLとすると、次式により算出されます(令135条の17)。
Wa=(12-Wr)×(70-L)÷70 (単位:メートル)
基準容積率算定上の前面道路の幅員(W)は、
W=Wr+Wa
となり、容積率の限度は、Wに10分の4(もしくは10分の6または10分の8)を乗じた数値となります。
(2)その他の緩和
次の①②のいずれかの場合であって、特定行政庁が許可した場合の容積率は、これまでの容積率の規定の限度を超えることができます(法52条14項)。
また、③の場合で、交通、安全、環境整備等の観点から特定行政庁が許可した場合にも、容積率は緩和されます(法59条の2)。
①同一敷地内の建築物の機械室その他これに類する部分の床面積の建築物の延べ面積に対する割合が著しく大きい場合
②敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地がある場合
③敷地内に政令で定める空地を有する一定規模以上の敷地面積がある場合(いわゆる「総合設計制度」)
4.地階における住宅部分の容積率の緩和
住宅の用途に供する部分が地階にある場合には、その地階の部分が当該建築物全体における住宅の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1までは、容積率算定の基礎となる延べ床面積には算入しないものとされています(法52条3項)。これは、地階にある住宅部分の天井が地盤面からの高さ1メートル以下にある場合に適用されます。
なお、地盤面とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、高低差が3メートルを超える場合には、高低差3メートル以内ごとの平均の高さの水平面をいいます(法52条4項)。これにより、第1種低層住居専用地域などで容積率が厳しい地域にあっても、から堀等の衛生上の措置を前提に地階を設けることにより、有効利用ができることになっています。
5.共同住宅の共用の廊下等の部分の不導入
容積率の算定の基礎となる延べ床面積には、共同住宅の共用の廊下または地階の用に供する部分の床面積は、算入しないことにされています(法52条6項)。
ただし、この規定は容積率の最高限度に関する緩和規定ですから、容積率の最低限度が定められているような地域および高層住居誘導地区では適用されません。
6.敷地が2以上の地域・区域にわたる場合
建築物の敷地が、容積率に関する制限を受ける地域または区域の2以上にわたる場合においては、容積率は、各地域または区域の容積率の限度にその敷地の当該地域または区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければなりません(法52条7項)。
7.一定の住宅に関する容積率の緩和
建築物の全部または一部を住宅の用途に供するもので、次のいずれかの条件に該当するものは、都市計画において指定される容積率(法52条1項2号・3号)の数値の1.5倍以下で、その建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計に対し、一定の方法で算出した数値(法52条1項5号)を当該指定容積率とみなすことになります(法52条8項、令135条の14)。
ただし、地階にある住宅部分の延べ面積の緩和の規定適用は、これを含んで1.5倍が上限となります。
①第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域(高層住居誘導地区および特定行政庁が指定する区域を除きます)
②敷地内に政令で定める規模以上の空地(道路に接する部分に限ります)を有し、かつ、その敷地が政令で定める規模以上のもの(令135条の16)
8.計画道路および壁面線の指定がある場合の容積率
(1)計画道路の場合
建築物の敷地が、都市計画において定められた計画道路に接する場合、または敷地内に計画道路がある場合には、とくに特定行政庁が許可した建築物は、その計画道路を前面道路とみなして容積率の規定を適用します。
この場合、当該敷地のうち計画道路に係る部分の面積は、敷地の面積に算入しません(法52条10項)。
(2)壁面線の指定がある場合
壁面線の指定がある場合において、特定行政庁が許可した建築物については、壁面線を前面道路の境界線とみなして容積率の規定を適用します。この場合も、計画道路と同様に、前面道路と壁面線との間の部分の面積は敷地面積には算入しません(法52条11項)。
(3)7住居地域の壁面線等による基準容積率の緩和
7住居地域(法52条2項)内では、壁面線の指定または壁面の位置の制限がある場合、前面道路の境界線は、当該壁面線等にあるものとみなして、法52条2項から7項まで、および9項の容積率に関する規定を適用します。
ただし、この場合の前面道路の幅員に乗ずる数値は、10分の6です(法52条12項)。このときには、前面道路と壁面線等との間の部分の面積は敷地面積に算入しません(法52条13項)。
【法53条1項~7項(建ぺい率の制限)】
都市計画区域内における建築物の制限の中で、最も中心的な制限は、いわゆる「形態規制」と呼ばれるものです。
そして、建築物の大きさに関する制限として、建ぺい率および容積率があります。「建ぺい率」とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合のことをいいます。環境を重視するような用途地域では、敷地のゆとり部分を大きく確保する必要があります。したがって、そのような地域では、建ぺい率の規制が問題になります。
建ぺい率は、都市計画の用途地域などにあわせて、建築基準法において定められた数値の中から指定されますが、環境、延焼防止などの観点から、一定の条件のもとでは建ぺい率が緩和され、あるいは、不適用となる場合もあります。
(解説)
1.建ぺい率の指定
建ぺい率は、原則として、次表の地域区分ごとに定められている建ぺい率の数値(同一敷地内に2以上の建築物がある場合はその合計)を超えることができません(法53条1項)。
建ぺい率の限度表
2.敷地が2以上の地域・区域にわたる場合
建築物の敷地が、上記1による建ぺい率に関する制限を受ける地域または区域の2以上にわたる場合においては、建ぺい率は、上記1の建ぺい率の限度に当該地域または区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければなりません(法53条2項)。
3.建ぺい率の緩和
次の場合には、上記1、2の建ぺい率が緩和されます(法53条3項、4項)。
①第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、田園住居地域、準工業地域、近隣商業地域、商業地域内で建ぺい率の限度が10分の8とされている地域外で、かつ、防火地域内にある耐火建築物は、建ぺい率に10分の1を加算した数値まで緩和されます。
②街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物は、建ぺい率に10分の1を加算した数値まで緩和されます。
③①および②の両方に該当する場合には、10分の2を加算した数値まで緩和されます。
④隣地境界線から後退して壁面線の指定がある場合または壁面の位置の制限(隣地境界線に面する建築物の壁またはこれに代わる柱の位置および隣地境界線に面する高さ2メートルを超える門または塀の位置を制限するものに限ります)がある場合において、その壁面線または壁面の位置の制限として定められた限度の線を越えない建築物(軒、ひさし、建築物の地盤面下の部分、高さ2メートル以下の門または塀を除きます)で、特定行政庁が安全上、防火上および衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものは、許可の範囲内で緩和されます。
4.建ぺい率の不適用
次の建築物については、建ぺい率の制限は適用されません。つまり、敷地全体にわたって建築することができます(法53条5項)。
①第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、田園住居地域、準工業地域、近隣商業地域、商業地域内で、建ぺい率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ、防火地域内にある耐火建築物
②巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するもの
③公園、広場、道路、川その他これらに類するものの内にある建築物で特定行政庁が安全上、防火上および衛生上支障がないと認めて許可したもの
【法53条の2第1項、2項および3項(用途地域内における建築物の敷地面積の制限)】
敷地面積の最低限度についての制限です。これは用途地域内の良好な環境を保持するための制限ですが、すでに建築物の敷地として利用されている土地が、その基準面積に満たない場合の救済策として、一定の例外も認められています。
(解説)
用途地域内においては、都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、当該限度以上でなければなりません(法53条の2第1項)。
この最低限度面積は、200平方メートルを超えてはならないとされています(法53条の2第2項)。例えば、150平方メートルと定められた場合には、300平方メートルの土地を分割して160平方メートルと140平方メートルにしたとすると、この140平方メートルの土地には建築物を建築することはできません。
ただし、建ぺい率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ、防火地域内の耐火建築物、公衆便所等の公益上必要なもの、敷地の周囲に広い公園等の空地があり、特定行政庁が許可したもの等については、かかる制限は適用されません。また、敷地面積の最低限度が定められ、または変更された際に、現に建築物の敷地として使用されている土地、または、現に存在する所有権等の権利に基づいて敷地として使用しようとする土地で、その最低限度未満のものについて、その全部を一つの敷地として使用する場合には、例外的に、最低限度の制限は適用されません(法53条の2第3項)。
なお、高層住居誘導地区が指定され建築物の敷地面積の最低限度が定められた場合には、上記最低限度の制限が準用されます(法57条の15第3項)。
【法54条(第1種低層住居専用地域または第2種低層住居専用地域内における外壁の後退距離)】
第1種低層住居専用地域および第2種低層住居専用地域については、互いに隣家との間隔を十分にとり、低層住居に係る住環境を保護するための特別の規定があります。
(解説)
都市計画において、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの後退距離の限度を1.5メートルまたは1メートルと定めることができ、その場合には、外壁の後退距離はその限度以上としなければなりません(法54条1項・2項)。
【法55条1項~3項(第1種低層住居専用地域等内における建築物の高さの限度)】
敷地の周辺に空地を設け、日照を確保するための規定です。
(解説)
第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域または田園住居地域内においては、建築物の高さは、10メートルまたは12メートルのうち、都市計画で定められた限度を超えてはなりません(法55条1項)。
ただし、高さの限度が10メートルと定められた地域においては、その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物であって、特定行政庁が認めた場合には、12メートルまで建築することができます(法55条2項)。
これらの規定は、周辺に空地を設け日照を確保するための規定ですから、次の場合には適用除外とされます(法55条3項)。
①その敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地があり、低層住居の良好な住環境を害するおそれがないと認めて特定行政庁が許可した建築物
②学校その他の用途によって、やむを得ないと認めて特定行政庁が許可した建築物
【法56条(建築物の各部分の高さの限度)】
建築物の高さ制限の代表的なものです。市街地の防災などを図りつつ、建築空間を確保するために、道路または隣地などの境界から離れるほど高い建築物を建築することができます。いわゆる道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限と呼ばれる制限です。
(解説)
1.道路斜線制限
(1)基本的規制
建築物の各部分の高さは、当該部分から道路の反対側の境界線までの水平距離に、一定の区分に応じて定めた数値を乗じて得たもの以下としなければなりません。
ただし、この制限は、前面道路の反対側の境界からの水平距離が、一定の区分に応じて定められた距離以下の範囲内においてのみ適用され、この範囲以外の敷地においては適用されません(法56条1項1号)。
一定の区分とは、地域、区域および容積率の限度に応じ、次ページの表の道路斜線制限の数値区分(別表3)のとおり定められています。
道路斜線制限の数値区分(別表3)
(注)第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域(容積率の限度が10分の40とされている地域に限る)または、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域のうち特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物は1.25が1.5となり、また25mは20mに、30mは25mに、35mは30mとなります。
(2)道路境界から後退して建築した場合の緩和規定
前面道路の境界から後退した建築物に対する道路斜線制限の規定の適用については、下図のように「前面道路の反対側の境界線」は「前面道路の反対側の境界線から当該建築物の後退距離に相当する距離だけ外側の線」として適用されます(法56条2項)。
なお、道路斜線制限の緩和措置は、「建築物の敷地が2以上の道路に接する場合、公園、広場その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地の地盤面が道路より高い場合」においても適用があり、その具体的な適用については政令で定められています。
政令では、1に最大の幅員の前面道路の境界線から幅員の2倍以内で、かつ、35メートル以内の敷地の区域と、その他の道路の中心線から10メートルを超える敷地の区域は、すべてが幅員の最大の前面道路とみなして斜線制限を適用し、その残余の敷地の区域については、次に幅員が大きい前面道路から一定の方法で適用します(法56条6項、令131条の2~135条の2)
(3)敷地が2以上の地域にわたる場合
建築物の敷地が2以上の用途地域等にまたがる場合の措置は、次のとおりです(法56条5項)。
①別表3における「建築物」を「建築物の部分」と読み替えて数値を適用します。
②同表中での制限を受ける範囲である「距離」の適用については、同表中「建築物がある地域または区域」とあるのは「建築物または建築物の部分の前面道路に面する方向にある当該前面道路に接する敷地の部分の属する地域または区域」と読み替えます(令130条の11)。
(4)5住居地域における道路斜線制限の緩和
①第1種中高層住居専用地域から準住居地域までの5住居地域内における、前面道路の幅員が12メートル以上である場合の斜線制限(別表3の適用)は、前面道路の反対側の境界線からの水平距離が前面道路の幅員に1.25を乗じて得た数値以上の区域内では、高さ制限として当該距離に乗ずべき数値は1.25ではなく1.5とされます(法56条3項)。
②前面道路の境界線から後退した建築物の斜線制限の適用は、次のように緩和されています(法56条4項)。
A )前面道路の反対側の線は、後退した距離だけ外側の線にあるものとすることができます。
B)前面道路の幅員は、当該建築物の後退距離に2を乗じた数値を前面道路の幅員に加えた数値とすることができます。
2.隣地斜線制限
(1)基本的規制
隣地斜線制限の内容は、基本的には上記1と同様ですが、建築物の各部分の高さは、下記の表の区分㋑もしくは㋥に定める数値が1.25とされている建築物で、高さが20メートルを超える部分を有するもの、または、区分㋑~㋥に定める数値が2.5とされている建築物で、高さが31メートルを超える部分を有するものにあっては、それぞれ、その部分から隣地境界線までの水平距離のうち最小のものに相当する距離を、隣地境界線までの水平距離に加えたものに一定の数値(道路斜線の区分と同じ1.25または2.5)を乗じたものを、20メートルまたは31メートルに加算することができるというものです(法56条1項2号)。
(2)適用除外
上記区分㋑には、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域および田園住居地域が含まれていません。これらの地域は、高さの制限が10メートルまたは12メートルとなっているため、高さが20メートルを超える場合についての隣地斜線制限はそもそも適用され得ないからです。
隣地斜線制限
3.北側斜線制限
(1)基本的規制
建築物の各部分の高さは、当該部分から前面道路の反対側の境界線または隣地境界線までの真北方向の水平距離に1.25を乗じて得たものに、第1種低層住居専用地域または第2種低層住居専用地域内の建築物にあっては5メートルを、第1種中高層住居専用地域または第2種中高層住居専用地域内の建築物にあっては10メートルを加えたもの以下としなければなりません(法56条1項3号)。
北側斜線制限
(2)北側斜線の不適用
法56条の2に定める「日影による中高層の建築物の高さの制限」が適用される第1種中高層住居専用地域または第2種中高層住居専用地域については、北側斜線制限よりも当該日影規制の方が厳しいため、北側斜線制限は適用されません。
4.天空率による斜線制限の緩和
(1)基本的規制
各種の斜線制限により確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が確保される建築物については、斜線制限は適用されません(法56条7項)。具体的には、建築物が敷地周囲に及ぼす天空に対する立体角投射率(これを「天空率」といいます)への影響を、各斜線制限による天空率と比較し、天空率が低下しない範囲内であれば斜線制限を適用しないという緩和措置です。
(2)対象となる建築物の基準と天空率の算定
(解説)
天空率は、次頁の式によって計算します(令135条の5)。
【法56条の2(日影による中高層の建築物の高さ制限)】
大都市を中心とした建築物の高層化により、日照に係る紛争が多発したため、日照に関する住環境の保護を目的として、住居地域を中心に建築物の高さを規制しようとするものです。
(解説)
1.対象区域
建築基準法の別表4の(い)欄に掲げる地域の全部または一部で、地方公共団体の条例で指定する区域が、日影規制の対象区域となります(法56条の2第1項)。
ただし、市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域で用途地域の指定のない区域、準都市計画区域、および都市計画区域外であっても都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内においては、地方公共団体の条例により必要な日影規制の基準を適用することができることに注意が必要です。
2.日影規制時間
区域内にある(ろ)欄に掲げる建築物は、冬至日の真太陽による午前8時から午後4時までの間においては、原則として、(は)欄に掲げる平均地盤面からの高さの水平面に、(に)欄のうち条例で指定する各号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないようにしなければなりません(法56条の2第1項、別表4)
例外として、特定行政庁が土地の状況等により周囲の住環境を害するおそれがないと認めて、建築審査会の同意を得て許可した場合には、日影規制は適用されません。
日影による中高層の建築物の制限(別表第4)
3.規制の対象となる建築物
(1)原則
規制の対象となる建築物は、原則として、高さが10メートルを超えるもので、第1種・第2種低層住居専用地域または田園住居地域については、軒の高さが7メートルを超えるもの、または地階を除く階数が3以上のものです(法56条の2第1項)。
(2)適用方法
①日影を測る平均地盤面からの高さは、4メートルまたは6.5メートル(第1種・第2種低層住居専用地域または田園住居地域については1.5メートル)です(法56条の2第1項)。
②日影となる部分を生じさせてはならない時間は、原則として、敷地境界線の外側5メートルから10メートルの範囲と、同10メートルを超える部分との両方を同時に満足させなければなりません(法56条の2第1項)。
③同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、これらの建築物を1つの建築物とみなして適用します(法56条の2第2項)。
④建築物の敷地が、道路、川または海その他これらに類するものに接している場合には、政令で定める緩和措置があります(法56条の2第3項、令135条の12第1項1号)。
また、建築物の敷地が、これに接する隣地より1メートル以上低い場合には、高低差から1メートルを減じた2分の1だけ平均地盤面が高いものとみなすという緩和措置があります(法56条の2第3項、令135条の12第1項2号)。
⑤対象区域外にある建築物であっても、高さが10メートルを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、当該対象区域内にある建築物とみなして適用します(法56条の2第4項)
⑥建築物が、日影時間の制限の異なる区域の内外にわたっている場合には、それぞれの区域に対象建築物があるものとして適用します(法56条の2第5項、令135条の13)。
⑦高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分、当該建築物の敷地内の部分では、日影規制は適用されません(法56条の2第1項)。
⑧特定行政庁が土地の状況等により住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合も、日影規制は適用されません。
【法57条の2第3項(特例容積率適用地区内における建築物の容積率の特例)】
【法57条の4第1項ただし書き(特例容積率適用地区内における高さの限度)】
(解説)
1.特例容積率の限度の指定
特例容積率適用地区内の2以上の敷地の土地に所有権、地上権、賃借権を有する者は、1人でまたは数人が共同して、特定行政庁に対し、当該2以上の敷地のそれぞれに適用される特別の容積率の限度の指定を申請することができ、一定の要件を満たすときは特定行政庁は、特例容積率の限度を指定することになっています(法57条の2第1項・3項)。
2.建築物の高さの最高限度
特例容積率の適用地区内においては、基準容積率を超えた土地利用がなされる敷地が生じることから、市街地環境確保の必要性な場合には、特例容積率適用地区の都市計画に建築物の高さの最高限度を定めることができ、建築物の高さは定められた最高限度以下でなければなりませんが、特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可したものについては、この限りではありません(法57条の4第1項但書)。
【法57条の5第1項および2項(高層住居誘導地区内における建築物の高さ制限)】
郊外に拡散した住宅地を都心部に呼び戻し、利便性の高い高層住宅の建築を誘導する目的で設けられた制度です。
(解説)
1.高層住居誘導地区内の制限
高層住居誘導地区では、都市計画において、建ぺい率の最高限度および敷地面積の最低限度を定めることができます。したがって、建築物はこれらの限度を守らなければなりません(法57条の5第1項・3項)。
2.緩和規定
高層住居誘導地区が指定されると、容積率が緩和され、道路斜線制限および隣地斜線制限の勾配がそれぞれ1.5および2.5に緩和(住宅部分が3分の2以上のものについて)され、さらに、日影規制は不適用(対象区域内へ日影を生じさせる場合は除きます)などの適用を受けます。
〔容積率の緩和〕
容積率は、指定容積率の1.5倍以下で、住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合に応じて政令で定める方法により算出した数値までの範囲で、都市計画において定められます(法52条1項5号、令135条の14)。
政令で定める算出数値(V)=12÷(3-R)
R:建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合
なお、高層住居誘導地区では、道路幅員に乗ずる基準容積率算定の数値は、10分の4ではなく10分の6となることに注意してください(法52条1項)。ただし、住宅地下の床面積の容積不算入措置を併用しても指定容積率の1.5倍が上限です(法52条1項但書)。
【法58条(高度地区内における建築物の高さ制限)】
高度地区は、用途地域内において、建築物の高さの最高限度または最低限度を都市計画で定めます。一般に高さ30メートル以下、20メートル以上などの数値を定めますが、大都市では斜線制限のような仕組みを取り入れている都市計画もあります。高度地区内においては、都市計画で定められた内容に適合するものでなければなりません(法58条)。
【法59条1項および2項(高度利用地区内における建築物の容積率、建ぺい率等の制限)】
高度利用地区は、用途地域内において、容積率、建ぺい率および建築物の建築面積等について都市計画で定めます(都市再開発法における市街地再開発事業の施行は、高度利用地区内でなければならないことになっています)。
(解説)
高度利用地区内では、建築物の容積率、建ぺい率、建築面積、建築物の壁またはこれに代わる柱は、原則として、高度利用地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければなりません(法59条1項、2項)。
なお、高度利用地区内では堅固な高層建築物の建築を目指す地区で都市再開発法上の規制との関係から、主要構造部が木造、鉄骨造り、コンクリートブロック造り、その他これらに類する構造であって、階数が2以下で、かつ、地階を有しない建築物で、容易に移転、除却できるもの、その他の公益上必要なものなどは制限を受けません(法59条1項)。
また、敷地内に道路に接して有効な空地が確保されていること等により、特定行政庁が、交通、安全等の上で支障がないと認めて許可した場合は、斜線制限は適用されません(法59条4項)。
【法59条の2第1項(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の制限)】
これは、「総合設計制度」といわれるものです。この制度の目的は、敷地規模の拡大を促進すること、敷地の有効利用を図ること、広場等の空地による環境整備を図ることにあります。
(解説)
敷地内に政令で定める空地(公開空地)を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が許可した場合においては、容積率および各部分の高さについては、その許可の範囲内において、通常の規定による制限(法52条1項~9項、55条1項、56条、57条の2第6項)を超えることができます(法59条の2第1項、令136条2項・3項)。
【法60条1項および2項(特定街区内における建築物の容積率等の制限)】
上記「総合設計制度」と「特定街区」とは、基本的にはその目的は同一で、形態規制を緩和するものですが、総合設計制度は、建築基準法を根拠に敷地単位で許可申請するものであるのに対し、特定街区は、都市計画法を根拠に街区単位で利害関係者の同意を得て、市町村が都市計画決定する点が異なります。有名なものに東京霞ヶ関ビルや新宿京王プラザ、副都心ビルなどがあります。
(解説)
特定街区の主な制限は次のとおりです。
①特定街区内においては、建築物の容積率および高さは、当該都市計画において定められた限度以下でなければなりません(法60条1項)。
②特定街区内においては、建築物の壁またはこれに代わる柱は、建築物の地盤面下の部分および国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これに類するものを除き、当該都市計画において定められた位置の制限に反して建築してはなりません(法60条2項)。
【法60条の2第1項~3項および6項(都市再生特別地区内における建築物の容積率、建ぺい率等の特例)】
都市再生特別措置法により、都市計画において都市再生特別地区が指定されると、同地区内における建築物は特別の取扱を受けることになります。
(解説)
1.容積率・建ぺい率等の制限
都市再生特別地区内においては、建築物の容積率および建ぺい率、建築物の建築面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、それぞれの建築面積)並びに建築物の高さは、都市再生特別地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければなりません(法60条の2第1項)。
ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、例外的に、この制限は適用されません。
①主要構造部が木造、鉄骨造り、コンクリートブロック造りその他これらに類する構造であって、階数が2以下で、かつ、地階を有しない建築物で、容易に移転し、または除却できるもの
②公衆便所、巡査派出所その他これらに類する建築物で、公益上必要なもの
③学校、駅舎、卸売市場その他これらに類する公益上必要な建築物で、特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可したもの
2.壁面の位置
都市再生特別地区内においては、建築物の壁またはこれに代わる柱は、建築物の地盤面下の部分および国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これに類するものを除き、都市再生特別地区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築してはなりません。ただし、上記1各号のいずれかに該当する建築物については、上記1同様例外的に、制限は適用されません(法60条の2第2項)。
なお、都市再生特別地区に関する都市計画において定められた誘導すべき用途に供する建築物については、建築基準法48条(用途地域別の建物の用途制限)および49条(特別用途地区における制限)の規定は適用されません(法60条の2第3項)。
3.日影規制の特例
都市再生特別地区内の建築物については、56条の2第1項(日影による中高層建築物の高さ制限)に規定する対象区域外にある建築物とみなして、同条の規定が適用されます(法60条の2第6項)。この場合における同条4項の規定の適用については、同項中「対象区域外の土地」とあるのは、「対象区域(都市再生特別地区を除く)内の土地」と読み替えます。
【法60条の3第1項~第3項(特定用途誘導地区内における建築物の容積率の制限等)】
特定用途誘導地区内においては、建築物の容積率および建築物の建築面積は、都市計画において建築物の容積率の最低限度および建築物の建築面積の最低限度が定められたときは、一定の建築物を除き、それぞれ、これらの最低限度以上でなければなりません(法60条の3第1項)。
また、特定用途誘導地区内においては、建築物の高さは、都市計画において建築物の高さの最高限度が定められたときは、特定行政庁がやむを得ないと認めて許可したものを除き、その最高限度以下でなければなりません(同条2項)。
さらに、特定用途誘導地区内においては、地方公共団体は、その地区の指定の目的のために必要と認める場合においては、国土交通大臣の承認を得て、建築物の用途制限の規定(法48条1項~12項)による制限を緩和することができます(同法3項)。
(解説)
都市再生特別措置法においては、立地適正化計画に記載された都市機能誘導区域のうち、当該都市機能誘導区域に係る誘導施設(例:病院などの医療施設、福祉施設、商業施設)を有する建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域については、都市計画に、特定用途誘導地区を定めることができるものとされています(都市再生特別措置法109条1項)。
特定用途誘導地区に関する都市計画においては
① 建築物等の誘導すべき用途およびその全部または一部を当該用途に供する建築物の容積率の最高限度
② 当該地区における土地の合理的かつ健全な高度利用を図るため必要な場合にあっては、建築物の容積率の最低限度および建築物の建築面積の最低限度
③ 当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合にあっては、建築物の高さの最高限度
を定めるものとされています(都市再生特別措置法109条2項)。
建築基準法60条の3は、これを受けて、具体的に規定しているものです。
【法61条(防火地域内における建築物の制限)】
建築基準法の重要なテーマとして、防災に対する措置があります。この中でも特に都市計画区域内の規制として、市街地の密集地域について防火地域または準防火地域を指定して、建築物の防火措置を規定しています。
(解説)
防火地域内においては、階数が3以上であり、または延べ面積が100平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、その他の建築物は耐火建築物または準耐火建築物としなければなりません(法61条)。
ただし、次のいずれかに該当するものは、対象外です。
①延べ面積が50平方メートル以内の平家建ての付属建築物で、外壁および軒裏が防火構造のもの
②卸売市場の上家または機械製作工場で主要構造部が不燃材料で造られたもの、その他これらに類する構造でこれらと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供するもの
③高さ2メートルを超える門または塀で、不燃材料で造り、または覆われたもの
④高さ2メートル以下の門または塀
【法62条(準防火地域内における建築物の制限)】
1.原則
準防火地域内においては、地階を除く階数が4以上である建築物または延べ面積が1500平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、延べ面積が500平方メートルを超え1500平方メートル以下の建築物は耐火建築物または準耐火建築物とし、地階を除く階数が3である建築物は耐火建築物、準耐火建築物、または外壁の開口部の構造および面積、主要構造部の防火の措置その他の事項について、防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する建築物としなければなりません(法62条1項)。
(注)単に「階数4」という場合には、地上だけでなく、地階も含みますが、「地階を除く階数が4以上」という場合には、地階の有無にかかわらず、地上4階建ての建築物となります(令2条1項8号)。
2.例外
卸売市場の上家または機械製作工場で主要構造部が不燃材料で造られたもの、その他これらに類する構造でこれらと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供するものは、準防火地域の制限を受けません(法62条1項但書)。
3.木造の建築物
準防火地域内では、一定規模以下のものは、木造とすることができますが、この場合でも、木造建築物の外壁および軒裏で延焼のおそれのある部分は「防火構造」としなければなりません(法62条2項)。
また、準防火地域内にある木造の建築物に付属する高さ2メートルを超える門または塀で、延焼のおそれがある一定の部分は、不燃材料で造り、または覆わなければなりません(法62条2項)。
【法67条の2第3項2号(特定防災街区整備地区内における建築行為に対する特定行政庁の許可)】
特定防災街区整備地区内においては、建築物の敷地面積は、特定防災街区整備地区に関する都市計画において定められた建築物の敷地面積の最低限度以上でなければなりませんが、特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可したものについては、この最低限度を下回ることができます(法67条の2第3項2号)。
(解説)
特定防災街区整備地区は、都市計画法の地域地区として定められますが、これが定められた地区内では、建築基準法において、建築物は、原則として耐火建築物または準耐火建築物としなければならないこと、都市計画において定められた最低敷地面積以上でなければならないこと等の制限があります。
この最低敷地面積の規定については、敷地面積が小さい土地上の建築も認める必要性等から、例外的に、特定行政庁が許可したもの、および、公衆便所、巡査派出所等の公益上必要なものは、制限がおよびません(法67条の2第1項・3項、都市計画法8条1項5の2号)。
なお、類似した用語で「防災街区整備地区計画」(都市計画法12条の4第1項2号)がありますが、これは都市計画の地区計画等の一種として定められるもので、都市計画事業として権利変換手法により施行される「特定防災街区整備地区」の指定とは異なるものであることに注意してください。
【法68条1項~4項(景観地区内の建築物に係る制限)】
景観法制定に伴う建築基準法改正により、「美観地区」が廃止され、「景観地区」が創設されました。景観地区は、都市計画における地域地区の1つで、市街地の良好な景観の形成を図るために定める地区です。
この趣旨から、景観地区に関する都市計画では、①建築物の建築意匠の制限、②建築物の高さの最高限度または最低限度、③壁面の位置の制限、④建築物の敷地面積の最低限度の規制を定めることができます。
建築基準法では、景観地区の建築物の高さの制限に関する特定行政庁の許可(法68条1項2号)および建築物の敷地面積の制限に関する特定行政庁の許可(法68条3項2号)の制度が定められました。
(解説)
1.高さ制限
景観地区内においては、建築物の高さは、景観地区に関する都市計画において建築物の高さの最高限度または最低限度が定められたときは、その限度を守らなければなりませんが、特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可した建築物については、この限りではありません(法68条1項2号)。
2.壁面の位置制限
建築物の壁またはこれに代わる柱は、景観地区に関する都市計画において壁面の位置の制限が定められたときは、建築物の地盤面下の部分を除き、当該壁面の位置の制限に反して建築してはなりません(法68条2項)。
3.敷地面積の制限
建築物の敷地面積は、景観地区に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、当該最低限度以上でなければなりません。
ただし、特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可した場合には、この制限は適用されません(法68条3項2号)。
また、この最低限度が定められ、または変更された場合には、法53条の2第3項の規定が準用されます(法68条4項)。
【法68条の2第1項・5項(地区計画等の区域内における建築物の敷地、構造等または用途に関する制限等)】
地区計画の区域内では、都市計画との関連から、地区の特性に応じた合理的な土地利用の実現を図るため、市町村の条例において建築物の敷地、構造、建築設備または用途に関する制限を定めることができます。
また、市町村は国土交通大臣の承認を得て、本条の規定に基づく条例で定めることにより、用途地域で定められた建築物等の用途の制限を緩和することができます。
(解説)
市町村は、地区計画等の区域内において、政令で定める基準に従い、条例で、建築物の敷地、構造、建築設備または用途に関する事項の制限を定めることができる(法68条の2第1項・2項)。
この条例による制限は、地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、沿道地区整備計画または集落地区整備計画が定められている区域に限って定めることができます。
また、市町村は条例により、用途地域で定められた建築物等の用途制限を緩和することができます(法68条の2第5項)。
【法68条の3第4項(再開発等促進区内等の制限の緩和等)】
地区計画または沿道地区計画の区域のうち再開発等促進区または沿道再開発等促進区内においては、敷地内に有効な空地があること等により交通、安全等の観点から支障がないと特定行政庁が認めて許可した場合には、建築物の斜線制限は適用されません(法68条の3第4項)。
(解説)
再開発等促進区等は、土地の高度利用と都市機能の増進とを目的として、市街地の再開発または開発整備を実施すべく、都市計画で定められます。
本条は、これをスムーズに実現するために、あらかじめ建築物の高さの制限である斜線制限の原則的適用を除外することができる仕組みを設けるものです。
なお、第1種・第2種低層住居専用地域については、とくに周辺の低層住宅の環境に支障がないように計画を定めることとされています。
【法68条の5の2第2項(高度利用と都市機能の更新とを図る地区計画等の区域内における制限の特例)】
地区計画または沿道地区計画の区域内においては、敷地内に道路に接して有効な空地が確保されていること等により、交通、安全等の観点から支障がないと認めて許可した場合には、建築物の斜線制限は適用されません(法68条の5の2第2項)。
(解説)
再開発等促進区と同様に、地区計画または沿道地区計画の仕組みを利用し、とくに市街地再開発事業が施行される等の場合、容積率の最高限度および最低限度、沿道地区整備計画における道路との間口率等、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度、壁面の位置等が定められることから、このような場合には建築物の高さの制限である斜線制限の原則的適用を除外するものです。
【法68条の7第5項(地区計画等の区域内の予定道路による容積率)】
地区計画等の区域において予定道路の指定があった場合、建築物の敷地がこの予定道路に接するとき、または敷地内に予定道路があるときは、交通、安全等の観点から支障がないと特定行政庁が認めて許可した場合には、容積率の計算において、この予定道路を法52条2項の前面道路とみなすこととされています。
この場合には、予定道路に係る部分の面積は敷地面積に算入されません。
(解説)
特定行政庁は、地区計画等の区域において、道の配置、規模等を定めた場合に、一定の条件を満たすときに、建築審査会の事前同意を前提にして、予定道路の指定を行なうことができます。この場合には、将来その道路予定部分が道路として完成するので、事前にこれを道路として取り扱うこととされています。なお、敷地内に予定道路が配置されるときにも、これを除いた部分を敷地面積として容積率の計算をすることになります。
【法68条の9(都市計画区域および準都市計画区域以外の区域内の建築物に係る制限)】
建築基準法3章の規定は、8節を除き、すべて都市計画区域および準都市計画区域内だけで適用される規定です。
都市計画区域および準都市計画区域内だけで適用される規定(集団規定)は、道路に関するものの他、建築物の高さ、位置、大きさなど(形態規制)がありますが、都市計画区域および準都市計画区域外においても、リゾートマンションや保養施設が集団的に立地している地域があり、形態規制が必要となることがあります。したがって、例外的に、一定の区域内では、形態規制を定めることができることとされています。この場合、都市計画区域および準都市計画区域外での制限は、都市計画区域および準都市計画区域内での制限よりも厳しいものとすることはできません。
(解説)
都市計画区域および準都市計画区域外においても、建築が多い地域については、建築確認申請が必要な区域の1つとして、「都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域」(法6条1項4号)とされています。この区域内においては、地方公共団体は、必要と認めるときには、条例で建築物の敷地または構造に関する制限を定めることができます(法68条の9)。
条例による制限では、次の事項について定めるものとされています(令136条の2の6)。
①建築物またはその敷地と道路との関係
②建築物の容積率の最高限度
③建築物の建ぺい率の最高限度
④建築物の高さの最高限度
⑤建築物の各部分の高さの最高限度
⑥日影による中高層の建築物の高さの制限
【法75条(建築協定の効力)】
建築基準法は、建築についての最低限の基準を定めていますが、その他にさらに、地方公共団体の条例により地域的に対処することも可能とされています。
建築協定は、これら以外にさらに地域住民が厳しい規制を必要とした場合に、法および条例を補完する目的で自主的な協定を結ぶことができる制度として設けられたものです。
この制度は、住宅環境の保護と商店街の利便増進が主たる目的ですが、効力としてはあくまでも地域住民の自主的な契約とされています。
(解説)
建築協定は、市町村が、その地域の一部について協定を結ぶことができる旨の「建築協定条例」を定めていなければ、協定を締結することはできません(法69条)。
建築協定を締結することができる者は、土地所有者と建築物の所有を目的とする地上権または賃借権を有する者であり、その協定の効力は、建築協定の認可の公告があった日以後に土地所有者、借地権者となった者にもおよびます(法75条)。ただし、借地権の目的となっている土地(すなわち底地)の所有権を承継した者は除きます(法70条3項)。
なお、建築物の借家人であっても、協定の対象となる建築物の基準が、当該借家人の権限に係る場合には、その権限に係る限りにおいて、当該借家人も土地所有者または借地権者とみなして、協定の効力がおよびます(法77条)。
具体的には、例えば、借家人が家主の承諾を得て、内部または外部の造作などを増設したり改修したりしたところ、これが建築協定に抵触していたという場合が、これに該当します。
【法75条の2第5項(建築協定の認可等の公告があった日以降建築協定に加わった者があった場合のその建築協定の効力)】
上記75条の規定は、建築協定を結んだ土地について所有権、借地権の移転があった場合において、新たにその土地の所有者等になった者に対する効力についての規定ですが、本条は、建築協定区域内の土地所有者でありながら協定の効力が及ばなかった者が、建築物を所有することができるようになる場合等においては、いつでもこの協定に参加することができるという趣旨の規定です。建築協定区域隣接地の土地の所有者等についても同様です。
(解説)
建築協定区域内の土地の所有者でその効力が及ばない者は、いつでも特定行政庁に書面でその意思を表示することによって、当該協定に加わることができます(法75条の2第1項)。
また、建築協定区域の隣接地の区域内の土地の所有者等は全員の合意により、いつでも特定行政庁に書面でその意思を表示することによって、建築協定に加わることができ、この場合、隣接地区域は建設協定区域の一部とされます(法75条の2第2項・3項)。
これらの意思表示があった場合には、建築協定の認可公告がなされなければならず、その後に新たにその土地の所有者等となった者に対しても効力が及ぶことになります(法75条の2第5項)。
【法76条の3第5項(1つの土地所有者が定めた建築協定の効力)】
現在は1つの土地であっても、分譲等を予定しており、将来は複数の土地所有者となることがあります。このような場合には、1人の土地所有者のみ(借地権者を除きます)でも建築協定を定めることができます。これを通称「1人協定」といいます(法76条の3第5項)。
(解説)
「1人協定」は、認可の日から3年以内に2以上の土地所有者または借地権者が存することとなったときから効力を有します(法76条の3第5項)。
【法86条1項~4項(一定の複数建築物に対する制限の特例)ならびに法86条の2第1項(公告対象区域内における同一敷地内認定建築物以外の建築物の位置および構造の認定)】
いわゆる「一団地認定制度」と「連担建築物設計制度」といわれる制度です。建築基準法は、1つの建築物に対して1つの敷地が対応することを原則としています。これらの制度は、この「一建築物一敷地の原則」に対する特例ということになります。
(解説)
「一団地認定制度」は、当該団地内を1の設計によって同時に建築することを原則として、その団地内において一体的に容積率等の制限を適用するものです(法86条1項)。
これに対し、「連担建築物設計制度」は、敷地が小さく道路が狭い既成市街地などにおいて、隣接建築物と一体的に形態規制を適用し、土地の有効利用を実現することができる制度です。したがって、同時建築の原則は適用されないで、既存の建築物の存在を前提とした特例的措置となっています(法86条2項)。
連担建築物設計制度は、一団の土地の区域として特定行政庁が認定した公告対象区域において適用され、その区域に関する事項は一般の縦覧に供されます(法86条8項)。
この公告対象区域の認定を受けるためには、区域内の土地所有者および借地権者の同意により、位置および構造が安全上、防火上、衛生上支障がないことについて特定行政庁に申請することが必要です(法86条2項)。
なお、総合設計制度(法59条の2)と一団地認定制度に係る審査手続は、一つの許可で可能とされています(法86条3項)。
また、総合設計制度と連担建築物設計制度に係る審査手続も一つの許可で可能とされています(法86条4項)。
公告対象区域の認定後において、同一敷地内建築物以外の建築物の建築をする場合には、当初の認定と同様に特定行政庁の認定が必要ですが、関係者の同意は必要ありません(法86条の2第1項)。
なお、既に一団地認定制度または連担建築物設計制度による認定を受けた区域内において、同一の敷地内にあるとみなされていない建築物の建築を行なう場合の総合設計制度の許可と再度の一団地認定等に係る審査手続は一つの許可に係らしめることが可能とされています(法86条の2第2項)。
また、既に上記の法86条3項・4項の許可を受けた区域内において、同一の敷地内にあるとみなされていない建築物の建築を行なう場合は、特定行政庁の許可が必要です(法86条の2第3項)。
【法86条の8(既存不適格建築物に係る段階改修制度)】
建築基準法3条2項の既存不適格建築物を2以上の工事に分けて工事を行なう場合、特定行政庁が全体計画の認定をしたときは、既存不適格建築物扱いになる計画認定前に規制強化された基準につき、すべての工事が完了した段階で満たせば足りるとする特例が受けられます。
(解説)
規制強化が事前に見込まれる場合には、既存不適格制度を逆用し、いったん建築工事に着手した後に一定期間工事を中断し、再開することにより規制強化の適用を免れようとするケースがあることから、一定期間工事を中断する場合には、工事を中断したことをもって建築基準法上、一つの工事が終わったものとして、規制強化が適用されるようになっています。
しかし、大規模な既存不適格建築物を改修しようとする際、1期工事を増築等を伴う防火避難改修(防火戸、避難階段設置等)、2期工事を耐震改修というように、2以上の工事に分けて実施せざるを得ない場合があり(例えば、学校の夏休みごとの工事など)、このような場合に一連の工事を2以上の工事として計画的に実施されるものと特定行政庁が認定した場合、全体計画に係る最後の工事に着手するまでは規制強化規定を適用しないこととする制限の緩和がなされます。