66〕〈参考〉建物の区分所有に関する法律

マンションのような建物は、外観上は一棟の建物ですが、内部は独立した数個の住居、店舗、事務所等の部屋と、入居者が共同利用している玄関、廊下等の部分から成り立っています。

前者は、各入居者がそれぞれ所有権をもつ「専有部分」と呼ばれ、後者は、入居者が共有して共同利用する「共用部分」と呼ばれます。ここでは、一棟の建物を単独で所有し利用する場合と異なり、一定のルールに従った利用・管理ならびに負担が必要になります。

そのルールを定めた法律が「建物の区分所有等に関する法律」です。この法律には、権利や管理等について次のように定められています。

 

1.専有部分と共用部分

「専有部分」とは、各部屋のことをいい、それぞれ独立した所有権の対象となり(一棟の建物の中で区分された所有権であることから区分所有権といいます)、また、独立した登記の対象となります。

「共用部分」とは、「専有部分以外の建物の部分」、「専有部分に属しない建物の附属物」および「規約により共用部分とされた建物の部分および附属の建物」をいい、一般的には、共用の玄関・廊下・階段室・エレベーター・屋上・屋外階段・内外壁・柱等がこれにあたります。この部分は原則として登記の対象とはなりません。

共用部分は、区分所有者全員の共有となり、各共有者の共有持ち分は原則として、その有する専有部分の床面積の割合によります。

 

2.専有部分の登記面積

専有部分の登記される面積は、不動産登記法により、当該部分の壁の内側部分で計算された面積によって表示されますので、契約時にパンフレット等に表示された部屋(専有部分)の面積(これは当該部屋の壁の中心より計算されます)より多少小さくなりますので、説明の際に注意してください。

 

3.専用使用権

区分所有者は、本来、全員が共用部分および敷地を用法に従って使用することができますが、各区分所有者の合意により共用部分または敷地を特定の者に専用使用させる場合があります。この利用は、一般に「専用使用権」といわれるもので、専用使用権が設定される場所としては、ベランダ、バルコニー、駐車場、倉庫(トランクルーム)、専用庭等があります。この専用使用権が設定されると、その専用使用を認められた者だけが利用できることになります。この専用使用権の設定にあたり、対価の負担が生じることがあります。

 

4.区分所有建物の管理

マンションの共用部分と敷地の管理は、区分所有者全員で組織する管理組合が行います。この管理は、管理組合が自ら管理業務を行う自主管理が建前ですが、管理の煩雑さ、電気室・エレベーター等の管理は専門的技術が要求される等のことから、組合業務のうち一部あるいは全部を管理会社に委託している場合が多いです。

 

5.規約

建物または敷地、附属施設の管理、または使用に関する区分所有者相互間の事項は、基本的には区分所有法に規定がありますが、その他の事項につき規約で定めることができます。この規約は、管理組合の集会において、マンションの区分所有者(頭数および議決権)の4分の3以上の決議により設定、変更したりできます。しかも、この規約は、区分所有者の特定承継人(売買により部屋の所有権を取得した者)に対しても効力を有します。

なお、規約で定めることのできる事項には、共用部分の利用関係・共用部分・変更・管理、規約の設定・廃止、監理者の選任等があります。

 

6.管理費

管理費は、マンションの共用部分や敷地を維持管理していくために必要な費用で、共用部分や敷地の共有者である区分所有者等が当然これを負担します。

負担割合は、原則として、各区分所有者の共有持ち分割合で決められますが、規約で別に定めることもできます。

 

7.計画修繕積立金、大規模修繕積立金

マンションは年月が経つにつれて、いろいろな補修や大修繕をしなければならなくなります。階段の蛍光灯取り替えなどの小修繕は上記6の管理費の中に計上されていますが、大修繕については、突然そのときに各区分所有者に負担を求めると過重負担となることが考えられるので、事前に計画的に管理費とは別にその修繕費を積み立てておくのが適当です。これを一般に「計画修繕積立金」とか「大規模修繕積立金」といいます。

 

8.区分所有者等の義務

各区分所有者または建物賃借人は、建物の保存に有害な行為、その他建物の管理または使用に関し他の区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはなりません。

 

9.敷地利用権等

マンションは、敷地の上に一棟の建物が建っており、建物の区分所有者は、常に敷地を利用する必要があります。この敷地を利用する権利のことを「敷地利用権」といいます。そして、区分所有法では、原則として、建物の区分所有権と敷地利用権を一体不可分の関係として、建物の区分所有権と敷地利用権を切り離して処分することを禁止しています。

この敷地利用権には、所有権、地上権、賃借権、使用借権等の態様がありますが、一般的には所有権のときは全員で共有し、借地権(賃借権、地上権)のときは全員で準共有するという形態になります。これらの敷地利用権につき、「登記した権利であって建物、または附属建物と分離して処分することができないもの」を不動産登記法上「敷地権」といいます。

そして、この「敷地権」の登記がなされると、専有部分と敷地利用権の両者一体的に生ずる権利変動に関する登記は、専有部分の登記用紙にのみ登記し、この登記がなされると敷地利用権についても同様の登記がなされたものとみなし、土地登記簿への登記を省略することができます。

 

10.建物の区分所有等に関する法律の一部改正

●共用部分の変更決議要件の緩和

形状の変更または効用の著しい変更を伴わないもの(大規模修繕、管理行為として行う外壁の補修など)は、区分所有者および決議権の各4分の3以上から各2分の1以上の決議で可能となりました。

●管理者および管理組合法人の代理権・当事者適格の拡張

●管理者および管理組合法人は、共用部分および共用である建物の敷地や附属施設について生じた損害賠償金・不当利得返還金の請求や受領に関し、区分所有者の代理人となることができます。

●管理規約や集会の決議により、①の請求や受領に関し、区分所有者の訴訟の原告や被告となることができます。

●管理組合法人化の要件緩和

管理組合法人化に必要とされた、区分所有者(組合員数)30人以上という人数要件が撤廃されました。

●管理規約・議事録等および集会・決議の電子化

●管理規約・議事録などの関係書類が電磁的記録で作成できることになりました。

●管理規約や集会の決議により、電磁的方法による決議をすることができます。

●区分所有者全員の承諾があるときは、書面または電磁的方法による決議をすることができます。

●復旧決議の買取指定者・買取請求権の行使期間

●復旧決議に伴い、決議に反対した組合員が有する建物および敷地に関する権利の買取請求権の相手方を、決議に賛成した者全員の同意により指定することができます。

●復旧決議後、集会の招集者(または買取指定者)が、買取請求ができる者に対し4か月以上の期間を定めて買取を催告したにもかかわらず、その期間内に買取請求がなされない場合には、買取請求権を行使できなくなります。

●建替え決議の要件緩和と招集通知

●区分所有者および議決権の各5分の4以上の決議で、建物を取り壊し、かつ、その敷地の一部もしくは全部、または、その敷地の一部または全部を含む土地に新しい建物を建てることができます。

●建替え決議の集会を開催するには、2か月前までに集会の招集通知を行い、通知書には議案の要領、建替え理由など、または修繕計画の内容、修繕積立金額などの情報を明らかにし、1か月前までに説明会を開催する必要があります。

●団地内建物の一括建替え決議

複数のマンションが存在する団地内で、その敷地が団地マンションの共有である場合、各棟ごとの区分所有者および決議権の各3分の2以上、全棟で各5分の4以上の決議で、団地内マンションの全ての建物の一括建替えが可能となりました。