21〕密集市街地整備法(12の4)

21〕 密集市街地における防災地区の整備の促進 に関する法律(密集市街地整備法)(12の4)

この法律は、密集市街地について計画的な再開発または開発整備による防災街区の整備を促進するために必要な措置を定めることにより、密集市街地の防災に関する機能の確保と土地の合理的な利用を図ることを目的とします。

 

「密集市街地」とは、その区域内に老朽化した木造の建築物が密集しており、かつ、道路や公園などの十分な公共施設がないこと、その他その区域内の土地利用の状況から、特定防災機能が確保されていない市街地をいいます。

 

ここで「特定防災機能」とは、火事または地震が発生した場合に、延焼防止および避難上確保されるべき機能のことをいいます。

【法33条1項および2項(防災街区整備地区計画の区域内における建築行為等の制限)】

防災街区整備地区計画の区域内で、地区防災施設の区域または防災街区整備地区整備計画が定められている区域においては、土地の区画形質の変更、建築物等の新築等の行為をしようとする者は、原則として、その行為に着手する日の30日前までに、一定の事項を市町村長に届け出なければなりません(法33条1項)。届出事項を変更しようとする場合も同様です(2項)。

 

(解説)

「防災街区整備地区計画」は、一定の条件に該当する密集市街地内の土地の区域で、当該区域における特定防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図るため、当該区域の各街区を防災地区として、一体的かつ総合的に整備することが適切であると認められるものについて、都市計画において定めるものです(法32条1項)。

【法197条1項(防災街区整備事業の施行についての認可の公告後の建築行為等の規制)】

防災街区整備事業の施行についての認可の公告があった後は、施行地区内において、当該事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物等の新築等、移転が容易でない物件の設置、堆積を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません(法197条1項)。

 

(解説)

防災街区整備事業の方法は、土地区画整理事業や第1種市街地再開発事業の手法に類似し、施行主体は、個人、組合、事業会社、地方公共団体、都市再生機構とされています。本法と同様の建築行為等の制限としては、施行予定者が定められた都市計画事業に係る施行区域内や第1種市街地再開発事業の施行地区内の建築行為等の制限があります。行為制限の対象行為は、土地については形質の変更、建築物その他の工作物については新築、改築、増築、政令で定める重量が5トンを超える物件の設置、堆積です(法191条2項、都市計画法8条1項5の2号)。

【法230条(個別利用区内の宅地の使用収益の停止)】

権利変換期日以後に個別利用区内の宅地またはその使用収益権を取得した者は、工事完了の公告があるまでは、当該宅地を使用収益することはできません(法230条)。

なお、権利変換期日において、従前の土地を目的とする所有権以外の権利は消滅しますが、当該権利に基づいて施行地区内の土地または建物を占有していた者およびその承継人は、施行者が通知した明渡期限までは従前の用法に従い占有を継続することができます(法228条)。

 

(解説)

防災街区整備事業では、事業計画において、施行地区、設計の概要、事業施工期間等を定めるとともに、権利変換方式による土地建物の共同化を基本として「防災施設建築物の敷地」を定めることとされ、この他当該敷地以外の敷地となるべき土地の区域として「個別利用区」を定めることができます(法124条1項・2項)。

この個別利用区は、従前の建築物を除却し、新たな土地へ権利変換するものであるので、工事が完了するまでは新たな土地である個別利用区も使用収益することが停止されます。

この規定は、土地区画整理事業において、従前の宅地等について権限に基づき使用収益できる者が換地処分の公告がある日までは使用収益を停止されることとの整合性をとったものです(法230条、土地区画整理法100条2項)。

【法283条1項(施行予定者が定められている防災都市計画施設の区域内における建築物の建築の制限)】

施行予定者が定められている防災都市計画施設の区域内において、建築物の建築を行おうとする者は、原則として、都道府県知事の許可を受けなければなりません。

ただし、①通常の管理行為、軽易な行為、②非常災害のため必要な応急措置、③都市計画事業の施行として行う行為等については、許可を受ける必要はありません(法283条1項)。

なお、この規定は、都市計画事業の承認の告示があった事業地内では、当然に当該事業が施行されることになるため、この告示がなされた後は、告示に係る土地の区域内では、適用されません(法283条2項)。

 

(解説)

防災都市施設を整備するための特別措置として、防災都市施設に関する都市計画については、都市計画事業の施行予定者を定めることができます(法281条1項)。

この場合において、施行予定者は、都市計画の決定等の告示の日から5年以内に事業の認可・承認を受けることになり、近い将来に行われることになる都市計画事業の施行の障害をあらかじめ防止する観点から、防災都市計画施設の区域内において建築物の建築を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません(法283条1項)。

この規定は、都市計画法における市街地開発事業等予定区域に関する都市計画の区域内での建築等の制限との整合性をとったものです(都市計画法52条の2第1項)。

【法284条(施行予定者が定められている防災都市計画施設の区域内における土地等の有償譲渡の制限)】

施行予定者が定められている防災都市計画施設の区域内の土地または土地建物等を有償で譲渡しようとする者は、当該土地建物等、その予定対価の額、譲り渡そうとする相手方等一定の事項を施行予定者に届け出なければなりません(法284条)。

 

(解説)

この届出の後30日以内に、施行予定者は、当該土地建物等を買い取る旨の通知をすることができるので、買い取らない旨の通知があった日までまたは届出後30日以内は、当該売買が禁止されることになります。

この規定は、都市計画法における市街地開発事業等予定区域に関する都市計画の区域内での土地建物等の先買い制度とのバランスをとったものです(都市計画法52条の3第2項~4項)。