1〕 都市計画法(1)
[法令名の後の( )内の数字は宅地建物取引業法施行令3条1項の各号数に対応。以下同じ。]
この法律は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、ひいては国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的として、都市計画の内容およびその決定手続、都市計画制限、都市計画事業等を定めています。
都市計画の決定および許可権限等は、原則的として、国ではなく地方公共団体、都道府県知事が中心的役割を担うものですが、近時これらの権限は、都道府県知事から市町村へ移行される傾向にあります。
【法29条(開発行為の許可)】
都市計画区域または準都市計画区域内における開発行為および都市計画区域外における一定規模以上の開発行為については、原則として、都道府県知事の許可が必要です。
(解説)
1.用語の解説
(1)「開発行為」とは
「開発行為」とは、「主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいう」とされています(法4条12項)。つまり、建築物の建築、特定工作物の建設を目的としたものでなければ、「開発行為」にはあたりません。
なお、この定義はあくまでも都市計画法上の定義ですから、他の法律で「開発」という場合は違う内容を指し、都市計画法上の許可が必要でも、他の法律による許可が必要な場合もあるので注意が必要です。
①「主として」とは
建築物、特定工作物の敷地として利用するために必要な範囲の土地であるかどうかという意味です。
したがって、物理的に見て一塊の土地の造成でも、建築物や特定工作物の敷地として利用するために必要でない部分については「開発行為」にはあたりません。
②「建築、建設の用に供する」とは
建築物の建築、特定工作物の建設の敷地にすることを目的としないものは、造成しても「開発行為」には該当しません。
したがって、単に切土して放置しておく、造成して資材置き場にする、青空駐車場にする、果樹園にするという行為は「開発行為」とはいえません。
③「区画の変更」とは
建築物、特定工作物の利用に付随した区画として、道路、生垣等による物理的な土地の区分を変更することをいいます。
したがって、単なる土地の分筆、合筆など権利区分の変更だけでは「区画の変更」とはなりません。逆に、1筆の土地であっても、異なった用途の建築物をそれぞれ個別に建築するような場合には、建築物に付随した土地の区画割り、すなわち、敷地の変更分割が生じることになるため「区画の変更」となります。
④「形質の変更」とは
切土、盛土等による土地の物理的な形状の変更と、農地などを宅地に変更するような利用上の性質の変更をいいます。
ただし、一連の建築行為とみなされるような整地、既存基礎の撤去、地ならしなどは該当しません。
⑤「建築物」とは
建築基準法2条1項に定める建築物をいい(法4条10項)、
A)土地に定着する工作物のうち、屋根、柱もしくは壁があるもので、これに付随する門、へい等の工作物
B)地下、高架の工作物内にある事務所、店舗等の施設で、建築整備を含むものです。
⑥「建築」とは
建築基準法2条13号に定める建築をいい(法4条10項)、建築物を新築、増築、改築、移転することです。
新築とは、新たに建築物を建築することですが、既存の建築物と用途上不可分の建築物を新たに建築する場合は、その敷地は既存の建築物と同一敷地とみなされるため、「増築」となります。
また、改築とは、建築物の全部もしくは一部を除却(災害等による滅失も含みます)した後、引き続き同一敷地内において用途、規模、構造が著しく異ならない建築物を造ることをいいます。
⑦「特定工作物」とは
開発許可制度は、無秩序な開発を抑制するためのものです。
無秩序な開発に伴う、a)環境悪化の問題、b)樹木乱伐による溢水の災害の問題に対応するためには、建築物の建築のための開発行為だけでなく、これら災害の問題のおそれのある工作物についても開発行為の規制の対象となります。
●工作物のうち
環境悪化のおそれがあるもの→第1種特定工作物
災害の発生のおそれがあるもの→第2種特定工作物
a)第1種特定工作物(法4条11項、令1条1項)
コンクリートプラント
アスファルトプラント
クラッシャープラント
危険物貯蔵施設等(ガソリン、石油、ガス等の貯蔵施設)
b)第2種特定工作物(法4条11項、令1条2項)
ゴルフコース
1ha以上の運動・レジャー施設(野球場、庭球場、陸上競技場、遊園地、動物園等)
1ha以上の墓園
2.開発許可
開発行為は、都市計画区域だけではなく、都市計画区域外についても規制の対象となることがあります。市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域または準都市計画区域については法29条1項で、都市計画区域および準都市計画区域外の区域においては同2項において規定されています。
このように開発行為をしようとする場合、あらかじめ都道府県知事の許可が必要となっていますが、例外として許可の必要のないものがあります。
〔許可不要なもの〕
①市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域または準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、政令で定める規模未満のもの……市街化区域は、原則1,000㎡、東京都の特別区の区域および3大都市圏では500㎡ですが、とくに必要がある場合には、都道府県の規則で一定の区域に限定して、1,000㎡または500㎡をそれぞれ300㎡まで引き下げることができます(令19条1項・2項、22条の2)。
開発許可を必要とする規模の基準原則
②市街化調整区域内において行う開発行為で、農業、林業、漁業の用に供する政令で定める建築物、またはこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの
これらは、市街化を促進することにならないものであることから、その規模にかかわらず許可は不要です。逆にいえば、これらの目的の開発行為でも、市街化区域であれば、計画的な都市建設のために、一定規模以上の開発行為は許可が必要になります。
(注)政令で定める「農林漁業用の建築物」とは、直接農林漁業に係るもので、2次的に加工する目的の用に供する建築物は含まれません。具体的には次のようなものです(令20条)。
a)畜舎、蚕室、温室、育種苗施設等、その他農林漁業の生産、集荷用の建築物
b)堆肥舎、サイロ、種苗貯蔵施設、農機具等収納施設その他農林漁業用の生産資材の貯蔵または保管用の建築物
c)家畜診療用の建築物
d)用排水機、取水施設農用地の保全もしくは必要施設の管理用建築物、索道用建築物
e)建築面積が90㎡以内の農林漁業用の建築物
③駅舎その他の鉄道の施設、社会福祉施設、医療施設、学校(大学、専修学校、各種学校を除く)、公民館、変電所等の公益上必要な建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
(注)ここで「学校」とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、盲学校、ろう学校、養護学校などをいいます。
④国、都道府県、指定都市、中核市、特例市等の一定の公的主体が行う開発行為
⑤都市計画事業の施行として行う開発行為
⑥土地区画整理事業の施行として行う開発行為
土地区画整理法の認可を受けて当該事業を施行する範囲においては、個人、組合施行の場合であっても開発許可は不要です。ただし、土地区画整理事業の施行の途中でも、当該事業の範囲に含まれないような開発行為(仮換地、保留地における開発行為など)については、許可が必要です(次の⑦⑧も同様です)。
⑦市街地再開発事業の施行として行う開発行為
⑧住宅街区整備事業の施行として行う開発行為
⑨防災街区整備事業の施行として行う開発行為
⑩公有水面埋立法の免許を受けた埋立地で、まだ工事の竣工認可の告示がない土地の開発行為
公有水面の埋立は都道府県知事の免許を受けて行うので、その工事が完了するまでは許可不要です。しかし、完了後の開発行為は当然に許可が必要となります。
⑪非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
建築物の応急性と臨時性の観点から、開発許可が不要とされています。
⑫通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
これは、a)仮設建築物、一時使用の第1種特定工作物のための開発行為、b)車庫、物置等の附属建物のための開発行為、c)増築面積が10㎡以内の目的での建築物、特定工作物のための開発行為、d)農林漁業用、公益上必要なもの以外の改築で用途変更を伴わないものの目的で行う開発行為、e)改築面積が10㎡以内の目的での建築物のための開発行為、f)延べ面積が50㎡以内の日用品の販売、加工、修理のための店舗等の新築の用に供する開発行為で、開発の規模が100㎡以内のもの(令22条)。
法29条で定める開発許可不要のまとめ
①市街化区域は、原則500㎡または1,000㎡未満の開発行為(非綿引き都市計画区域および準都市計画区域は原則3,000㎡未満、都市計画区域外は1ha未満)
②農林漁業用の建築物、農林漁業者の住居のための開発行為
③公益上必要な建築のための開発行為
④国、都道府県、指定都市、中核市、特例市等が行う開発行為
⑤都市計画事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業の施行として行う開発行為
⑥公有水面埋立法による埋立地で竣工認可告示前に行う開発行為⑦非常災害の応急措置として行う開発行為-通常の管理行為、軽易な行為等で政令で定められているもの
【法41条2項(建築物の建ぺい率等の指定)】
都道府県知事は、用途地域の定められていない土地の区域内における開発行為について開発許可をする場合において必要があると認めるときは、その開発区域内の土地について、①建ぺい率、②建築物の高さ、③壁面の位置、④その他建築物の敷地、構造および設備に関する制限を定めることができます(法41条1項)。
これらの制限が定められた土地の区域内においては、建築物は、原則として、その制限に違反して建築してはなりません(法41条2項)。
(解説)
市街化区域は、必ず用途地域が定められますから、これにより建築物の用途等形態を規制することができますが、用途地域が定められていない区域内について、周辺の地域の環境を保全する観点から建築物の形態について制限が付加するものです。
【法42条1項(開発許可を受けた土地における建築等の制限)】
開発許可制度は、建築物の建築または特定工作物の建設の基礎となる土地の区画形質の変更を規制するものです。
したがって、開発許可を意味あるものとするために、開発許可を受けた土地においては、その開発許可に係る予定建築物等以外の建築物等は、原則として、建築等をしてはなりません。
(解説)
開発行為の手順は次のように流れています。
1.工事完了公告前の制限
都市計画区域内では、開発許可を受けた土地においては、法36条3項の規定による工事完了公告があるまでは、建築物の建築、特定工作物の建設はできません。ただし、例外的に、次の場合は建築等ができます(法37条)。
①当該開発行為に関する工事用の仮設建築物等
②都道府県知事が支障がないと認めたとき
③工事実施の妨げとなる権利を有する者で、開発許可申請の際に開発行為に同意をしていない者(法33条1項)が、その権利行使として建築等をするとき
2.工事完了公告後の制限
原則として、予定建築物等以外の建築物または特定工作物を新築し、または新設してはならず、また、建築物を改築し、またはその用途を変更して当該開発許可に係る予定の建築物以外の建築物とすることはできません(法42条)。
例外として、a)都道府県知事が利便の増進上もしくは環境の保全上支障がないと認めて許可したとき、または、b)建築物および第1種特定工作物で建築基準法88条2項の政令で指定する工作物に該当するものについて、用途地域等が定められているときは、新築等ができます(法42条1項但書)。
【法43条1項(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)】
市街化区域は、必ず用途地域が定められることになっていることから、この用途に適合していれば自由に建築することができます。他方、市街化区域以外の区域内では、もともと市街化を抑制する必要がないことから区域区分が定められていないのですから、建築制限もする必要がないことになります。
したがって、開発許可を受けた土地以外の土地の建築制限とは、市街化調整区域での制限ということになります。
(解説)
1.市街化調整区域での建築等の原則
市街化調整区域は、市街化を抑制する必要から、原則として、都道府県知事の許可を受けなければ、建築物の新築、改築、用途変更、第1種特定工作物の新設をすることはできません(法43条1項)。
2.市街化調整区域での建築等の例外
市街化調整区域においても、次のものは許可を受けなくても建築物の新築、改築、用途変更、第1種特定工作物の新設をすることができます(法43条1項)。
①農林漁業用建築物(法29条1項2号に該当するもの)
②駅舎、医療施設、学校等公益上必要な建築物(法29条1項3号)
③国、地方公共団体が行う場合、都市計画事業の施行として行う場合等(法43条1項1号ないし6号)
(注)法附則6条(既存宅地の経過措置)
市街化調整区域内における「既存宅地」に該当する土地(旧法43条1項6号)の経過措置として、改正法の施行日(平成13年5月18日)前に既存宅地の確認を受けた土地については、施行日から5年以内、また改正法の施行前に既存宅地の申請がなされて施行日以降に確認を受けた土地については、その確認の日から5年以内は、自己の居住用または自己の業務用に供する建築物の建築に限り、従来どおり許可は不要です(法附則6条)。
なお、この確認を受けていない土地については、都市計画法34条8の3号、同8の4号による許可が必要で、許可の基準は都道府県等の条例により運用されるので、売買・仲介に際しては注意が必要です。
【法52条(田園住居地域内における建築等の規制)】
田園住居地域内の農地(耕作の目的に供される土地)の区域内において、土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設又は土石、廃棄物及び再生資源の堆積を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければなりません(法52条1項本文、令36条の3)。
ただし、次に掲げる行為については、市町村長の許可は不要です(同条1項本文、令36条の4)。
一 通常の管理行為、軽易な行為、工作物で仮設のものの建設、法令又はこれに基づく処分による義務の履行として行う工作物の建設又は土地の形質の変更、現に農業を営む者が農業を営むために行う土地の形質の変更又は土石、廃棄物及び再生資源の堆積等
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為
市町村長は、次に掲げる行為について許可の申請があった場合においては、その許可をしなければならないものとされています(同条2項、令36条の6・令36条の7)
一 土地の形質の変更でその規模が農業の利便の増進及び良好な住居の環境の保護を図る上で支障がないものとして300㎡未満のもの
二 建築物の建築又は工作物の建設で次のいずれかに該当するもの
イ) 前項の許可を受けて土地の形質の変更が行われた土地の区域内において行う建築物の建築 又は工作物の建設
ロ) 建築物又は工作物でその敷地の規模が農業の利便の増進及び良好な住居の環境の保護を図る上で支障がないものとして300㎡未満のものの建築又は建設
三 前項の政令で定める物件の堆積で当該堆積を行う土地の規模が農業の利便の増進及び良好な住居の環境の保護を図る上で支障がないものとして300㎡未満のもの(堆積をした物件の飛散の防止のため覆いの設置、容器への収納その他の堆積をした物件が飛散し、流出し、又は地下に浸透することを防止するための措置を講じたものに限る。)
(解説)
平成29年に都市計画法が改正され、新たに田園住居地域という用途地域が設けられました(法9条8項。平成30年4月1日)。これによって、用途地域の種類が、12種類から13種類に増えます。田園居住地域は、農業の利用の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域です。田園住居地域の創設によって、都市の構成要素としての農地が都市計画に位置づけられました。
田園住居地域の創設には、都市計画上、①農地における建築等の規制の導入、および、②農業用施設の建築を可能とする用途制限の緩和という2つの意義があります。
まず、市街化区域は、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」ですが、これまで生産緑地以外の市街化区域内農地について、その宅地化を規制する規定はありませんでした。田園居住地域について新たに導入される建築等の規制は、同地域内の農地において行われる土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設及び土石その他の物件の堆積について、市町村長の許可を受けなければならないとするものであり、市町村長は、その規模が農業の利便の増進及び良好な住居の環境の保護を図る上で支障がないものとして政令で定める規模未満である場合に限り、これを許可することとするものです(①農地における建築等の規制の導入)。
次に、現在農地が比較的多い住居専用地域では、建築基準法による建築物の用途制限上、農業用施設の建築は認められていません。これを建築するためには、特定行政庁の個別許可が必要です。これに対し、田園居住地域の用途制限は、住宅等のほか、農業用施設の建築を可能とするものです(②農業用施設の建築を可能とする用途制限の緩和)。
田園居住地域に関する都市計画については、建築物の建蔽率、壁面の後退距離の限度及び建築物の高さの限度が定められます。また、田園居住地域における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途に関して、建築基準法によって規制されることになります。
【法52条の2第1項(57条の3第1項において準用する場合を含む)(市街地開発事業等予定区域内における建築等の制限)】
市街地開発事業等予定区域の都市計画では、必ず施行予定者が定められ、原則として公示の日から3年以内には市街地開発事業または都市施設としての都市計画決定の告示がなされ、告示がなされると2年以内には都道府県知事の認可がなされ、事業が実施されることになります。
したがって、この予定区域が定められると、事業認可を受けた土地の区域(法62条1項)と同様の制限がなされることになります。
(解説)
市街地開発事業等予定区域に関する都市計画において定められた区域内については、次の行為については都道府県知事の許可を受けなければなりません(法52条の2第1項)。
①土地の形質の変更
②建築物の建築その他工作物の建設
ただし、非常災害に必要な応急措置および都市計画事業の施行として行う行為等は例外です。
〔施行予定者が定められている都市計画施設の区域等への準用〕
都市計画事業は、①都市計画の決定、②事業の認可というプロセスを経ますが、事業認可があった区域内では事業が具体的に実行される段階ですから、制限は厳しくなります。そして、予定区域は、近い将来に必ず②の事業地となることが予定されているため、規制が厳しくなっていますが、①の都市計画が決定されただけの段階であっても、施行予定者が定められれば、近い将来に必ず②の事業地となることが見込まれます。
したがって、都市計画の決定がなされただけの段階でも、市街地開発事業の施行区域または都市計画施設の区域において、施行予定者が定められた場合には、「市街地開発事業等予定区域」の場合と同じ制限がなされることとされています(法57条の3第1項)。
都市計画制限の分類
この告示の日の翌日から起算して10日を経過した後は、土地建物等の有償譲渡については、施行予定者に届け出なければならず、届出後30日以内の期間内は、施行予定者は必要と認める場合には、届出された土地建物等の予定対価の額で当該土地建物等を買い取ることができます(法52条の3第2項)。
市街地開発事業等予定区域の都市計画の告示があったときは、施行予定者は、すみやかに国土交通省令で定める事項を告示するとともに、予定区域内の土地建物等の有償譲渡について「届出」の義務等があることを関係権利者に周知させなければなりません。
(解説)
市街地開発事業等予定区域内では、近々必ず事業が実施されるため、建築等の制限がなされますが、土地建物等の売買についても、その売買の後すぐに、新しい所有者は事業施行者にその土地建物等を売却しなければならなくなってしまいます。したがって、この区域内では土地建物等の売買に際しては、あらかじめ売買のあることを施行予定者に届け出て、施行予定者は原則として、その土地建物等を事業に先行して買い取ってしまおうという制度です。
都市計画制限の分類【法52条の3第2項および4項(57条の4において準用する場合を含む)(市街地開発事業等予定区域内の土地建物等の施行予定者による先買い等)】
この有償譲渡の届出をした者は、施行予定者から買い取らない旨の通知がない限りは、30日間はその譲渡をしてはならないことになっています(法52条の3第4項)。
【法53条1項(都市計画施設等の区域内における建築の許可)】
都市計画の実行は、都市計画についての「事業認可」があってはじめて成し得るものですが、この認可の告示がなされた後は、「事業地内の制限」として、さらに厳しい制限が課されることになります。
しかし、都市計画事業の中には、様々な理由から、計画だけは決定したものの事業認可の段階に至るまで相当長期にわたり、施行予定者も定められていない場合も少なくありません。このような区域では、現段階では比較的緩い建築制限だけに留めています。
(解説)
都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内において、建築物の建築をしようとする場合には、原則として、都道府県知事の許可を受けなければなりません(法53条1項)。そして、次の①②に該当するときは、都道府県知事は許可をしなければならないとされています(法54条)。
①当該都市計画に適合した建築物の建築
②都市計画施設の区域について都市施設を整備する立体的な範囲が定められている場合において、その立体的な範囲外において行われ、都市計画施設の整備に著しい支障を及ぼすおそれがない建築
③階数が2以下で地階を有しない建築物で、主要構造部が木造、鉄骨造り、コンクリートブロック造り等の、容易に移転、除去することができる建築物の建築
ただし、政令で定める軽易な行為等については、右原則に対する例外として、許可は不要とされています。軽易な行為とは、木造2階以下で地階を有しないものの「改築」または「移転」がこれにあたります。建築とは、新築、改築、増築、移転をいいますが、新築および増築は許可の対象になり、改築および移転は軽易な行為として許可の必要はないものとされています(令37条)。
【法57条2項および4項(市街地開発事業の予定地内における都道府県知事による土地の先買い等)】
都市計画事業の計画決定がなされただけの段階では、建築行為の制限は緩やかとなっていますが、事業を実施することが早晩見込まれるような内容の計画では、建築制限だけではなく、土地の売買においても届出に係らしめ、場合によっては土地を先買いするものとする制度です。この対象となる土地は、①都市計画施設の区域内で都道府県知事が指定した土地、②市街地開発事業のうち土地区画整理事業および新都市基盤整備事業を除く事業の区域で、とくに「事業予定地」と呼ばれています。
(解説)
1.事業予定地内の土地の先買い
都道府県知事は、市街地開発事業に関する都市計画の告示または事業予定地(ただし都市計画施設については市街化区域内に限る)の公告があったときは、すみやかに事業予定地内の土地の有償譲渡について、一定の事項を公告し、届出が必要なこと等を周知させなければなりません(法57条1項)。
この公告の日の翌日から起算して10日を経過した後に事業予定地内の土地を有償で譲り渡そうとする者(土地とこれに定着する建築物その他の工作物を併せて有償で譲渡する場合は除きます)は、その予定対価の額等を書面で都道府県知事に届け出なければなりません(法57条2項)。都道府県知事が、届出をした者に対し、当該土地を買い取る旨の通知をしたときは、都道府県知事と売買契約が成立したものとみなされます(法57条3項)。
この通知は届出があった日から30日以内にするものとされており、届出をした者は、30日の期間内、または買い取らない旨の通知があるまでは譲り渡してはいけません(法57条4項)。
都市計画制限の各段階ごとの比較
2.土地の買取り
都道府県知事は、事業予定地内において行われる建築については、法54条により許可しなければならないとされている場合においても、許可しないことができ(法55条1項)、この場合、土地所有者から当該土地の利用に著しい支障をきたすことを理由として申出があれば、当該土地を時価で買い取らなければならないとされています(法56条1項)。
【法58条1項(風致地区内における建築等の制限)】
地域地区の都市計画の一つに風致地区があります。風致地区においては、個別法規による規制はなく、都市計画法における都市計画制限等の一つとしての規制がなされています。
(解説)
風致地区内においては、建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為について、地方公共団体の条例で規制を定めることができるとされています(法58条1項)。
【法58条の2第1項および2項(地区計画等の区域内における建築等の制限)】
都市計画の一つに地区計画等があります。このうち、地区計画の区域内における建築等の制限として届出義務の定めがあります。これも都市計画法における都市計画制限等の規制の一つとしての位置づけです。
(解説)
施設の整備および規模が定められている再開発等の促進区または地区整備計画が定められている地区計画の区域内において、土地の区画形質の変更、建築物の建築等を行おうとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、行為の種類、場所、設計等の事項を市町村長に届け出なければなりません(法58条の2第1項)。
このほか、個別法規で定められている集落地区計画の区域、沿道地区計画の区域または防災街区整備地区計画の区域内においても、それぞれの地区整備計画等が定められている場合には、これと同じ制限があります(集落地域整備法6条1項、沿道整備法10条1項、密集市街地法33条1項)。
ただし、次の場合は届出は不要です(法58条の2第1項)。
①通常の管理行為、軽易な行為、その他の行為で政令(令38条の5)で定めるもの
②非常災害のため必要な応急措置として行う行為
③国または地方公共団体が行う行為
④都市計画事業の施行として行う行為またはこれに順ずる行為として政令(令38条の6)で定める行為
⑤開発行為について許可を要する行為、その他政令(令38条の7)で定める行為
さらに、届出をした者は、届出事項を変更する場合にもその旨を届出が必要で、いずれの場合も届出を怠ると罰則が適用されます(法58条の2第1項・2項、法93条)。
また、市町村長は、届出があった場合において、その届出にかかる行為が地区計画に適合しないときは、必要な措置をとることを勧告すること、その他の措置をとることができます(法58条の2第3項・4項)。
【法65条1項(都市計画事業の事業地内における建築等の制限)】
都市計画の決定後、当該事業が施行されますが、事業を施行する前に施行者は、「事業認可」を受けなければなりません。
この事業認可を受けた土地の区域を「事業地」といい、この事業地内においては計画決定段階の場合に比して厳しい行為制限がはたらきます。
(解説)
1.都市計画事業の認可
都市計画事業は、市町村が都道府県知事の認可を受けて施行します(法59条1項)。ただし、市町村が施行することが困難その他特別な事情があるときは、都道府県知事が施行しますが、この場合は国土交通大臣の認可となり、また、国の利害に重大な関係を有する都市計画事業については国土交通大臣の承認を受けて国が施行します(法59条2項・3項)。なお、市町村、都道府県、国以外の者も一定の場合には、都道府県知事の認可を受けて施行することができるとされています(法59条4項)。
2.事業地内の制限
都市計画事業の認可または承認の告示後に、事業地内で、都市計画事業の施行の障害となるおそれがある次のいずれかの行為を行なおうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません(法65条1項)。
①土地の形質の変更
②建築物の建築その他工作物の建設
③重量が5トンを超え、移転が容易でない物件の設置もしくは堆積
【法67条1項および3項(都市計画事業の事業地内における施行者による土地建物等の先買い)】
都市計画事業の事業地内では、建築等の行為制限と併せて、事業を実行していく上で必要となる土地等を早急に取得していく必要があるため、土地建物等の先買い制度があります。
これは、さきの市街地開発事業等予定区域における先買い制度と同じ趣旨のものです。
(解説)
事業の認可または承認の告示があったときは、施行者は、すみやかに国土交通省令で定める事項を公告するとともに、事業地内の土地建物等の有償譲渡について届出の義務があることを関係権利者に周知させなければならない(法66条)。
そして、この公告の日の翌日から起算して10日を経過した後に、土地建物等を有償で譲渡しようとする者は、予定対価の額等を施行者に届け出なければならず、届出後30日以内は、施行者は当該土地建物等を買い取ることができます(法67条1項・2項・3項)。