54〕 都市再生特別措置法(33)

この法律は、近年における急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に我が国の都市が十分対応できたものとなっていないことにかんがみ、これらの情勢の変化に対応した都市機能の高度化と都市の居住環境の向上を図ろうとするものです。

【法第45条の7(都市再生歩行者経路協定の効力)】

都市再生緊急整備地域内の一団の土地の所有者及び建築物その他の工作物の所有を目的とする地上権または賃借権を有する者は、その全員の合意により、その地域内における都市開発事業の施行に関連して必要となる歩行者の移動上の利便性と安全性の向上のための経路の整備または管理に関する協定(以下「都市再生歩行者経路協定」という。)を締結することができます(法第45条の2)。この都市再生歩行者経路協定は、市町村長の認可の公告があった後にその協定区域内の土地の所有者等となった者に対しても、その効力が及びます(法第45条の7)。

【法第45条の8第5項(認可の公告後、都市再生歩行者経路協定に加わった場合の効力)】

都市再生歩行者経路協定区域内の土地所有者でその経路協定の効力が及ばないものは、認可の公告があった後いつでも、その経路協定に加わることができますが(法第45条の8第1項)、その加わった者がそのときに所有し、または借地権等を有していたその協定区域内の土地について、認可の公告があった後にその土地の所有者等となった者に対しても、その効力が及びます(法第45条の8第5項)。

【法第45条の11第4項(一人の所有者による都市再生歩行者経路協定の設定)】

都市再生緊急整備地域内の一団の土地で、一人の所有者以外に土地所有者等が存しないものの所有者は、都市再生歩行者経路の整備または管理のために必要があると認めるときは、市町村長の認可を受けて、当該土地の区域を協定区域とする都市再生歩行者経路協定を定めることができます(法第45条の11第1項)。

 

この都市再生歩行者経路協定は、認可の日から起算して3年以内において当該協定区域内の土地に二人以上の土地所有者等が存することとなったときから、法第45条の4第3項の規定による認可の公告のあった都市再生歩行者経路協定と同一の効力を有する協定となります(法第45条の11第4項)。

 

(解説)

この法律において、「都市再生緊急整備地域」というのは、都市の再生の拠点として、都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域として政令で定める地域のことをいいます(法第2条3項)。

 

この法律で、平成21年10月1日に創設された都市再生歩行者経路協定は、いわば快適な公共空間を実現するための歩行者ネットワーク(歩行者デッキ、地下歩道、歩行者専用通路等)の整備または管理に関する協定で、例えば管理費用の分担、清掃・防犯活動、ベンチ、植栽、エスカレーター等の設置・管理等を定めることができます。

 

この協定区域内の土地所有者等は、その協定に定められた都市再生歩行者経路の整備または管理に関する基準に従って経路の整備または管理を行うことが求められ、整備に係る実質的な費用負担や協定に違反した場合の違約金などが課されることもあり得ます。したがって、土地の購入者等にとって、当該土地が都市再生歩行者経路協定区域内であるか否かは契約をするかどうかの意思決定を左右するものであり、また、そのことを購入者等が事前に知り得ない場合は不測の損害を被る可能性があります。そこで、この協定は、購入者等にとって重要事項として、法令上の制限の一内容として説明することとなっています。

【法45条の13第3頁(退避経路協定の効力)】

都市再生緊急整備地域で大規模地震が発生した場合、滞在者等が安全に退避できる経路について土地所有者等が、その全員の合意により、整備又は管理に関する事項等を定めた協定を「退避経路協定」という(法45条の13第1頁)。この協定は、公告後に協定区域内の土地所有者等となった者に対しても、その効力があります(法45条の13第3頁)。

【法45条の14第3頁(退避施設協定の効力)】

都市再生緊急整備地域で大規模地震が発生した場合、滞在者等が安全に確保できるオフィスビル等の退避スペースについて、土地所有者等が、その全員の合意により、整備又は管理に関する事項を定めた協定を「退避施設協定」という(法45条の14第1頁)。この協定は、公告後に協定区域内の土地所有者等となった者に対しても、その効力があります(法45条の14第3頁)。

【法45条の20(管理協定の効力)】

都市再生緊急整備地域で大規模地震が発生した場合、滞在者等の安全を確保するために必要な食料等の物資を提供するために、これらを備蓄する備蓄倉庫について、地方公共団体が備蓄倉庫所有者等との間において権利者に代わって管理を行うこと等を定めた協定を「管理協定」という(法45条の15第1頁)。この協定は、公告後に協定施設の備蓄倉庫所有者等となった者に対しても、その効力があります(法45条の20)。

【法45条の21第5項(非常用電気等供給施設協定の効力)】

都市再生緊急整備地域において大規模災害が生じた場合、地域内の滞在者等の安全の確保を図るため、都市再生緊急整備協議会は、都市再生安全確保計画を作成することができることとされていますが、この計画において大規模な地震が発生した場合に滞在者等の安全や業務機能・行政機能等の継続を確保するため、エネルギーの安定供給を確保するための非常用の電気または熱の供給施設(非常用電気等供給施設)の設備等に関する事項を記載することができることになっています。

 

そこに記載された事項について、土地所有者等は、その全員の合意により、非常用電気等供給施設の整備または管理に関する協定を締結することができ(法45条の21第1項)、この協定は、公告があった後において協定区域内の宅地所有者等となった者に対しても、その効力が及びます(法45条の21第5項)。

【法88条1項・2項(居住誘導区域外における開発行為等の事前届出義務)】

市町村は、住宅及び医療施設、福祉施設、商業施設その他の居住に関連する施設の立地の適正化に関する計画(「立地適正化計画」)を作成することができますが、その計画に記載された居住誘導区域外において、一定規模以上の住宅等の開発等を行おうとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、当該行為の種類、場所、設計または施行方法、着手予定日等の事項を市町村長に届け出なければなりません(法88条1項)。

 

また、その届出をした者が、届出事項のうち一定の事項を変更しようとするときにも、当該事項の変更に係る行為に着手する日の30日前までに、その旨を市町村長に届け出なければなりません(同条2項)。

【法108条1項・2項(都市機能誘導区域外における開発行為等の事前届出義務)】

市町村は、住宅及び医療施設、福祉施設、商業施設その他の居住に関連する施設の立地の適正化に関する計画(「立地適正化計画」)を作成することができますが、その計画に記載された都市機能誘導区域外において、誘導施設(都市機能誘導区域ごとにその立地を誘導すべき都市機能増進施設(医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の共同の福祉または利便のため必要な施設であって、都市機能の増進に著しく寄与するものをいう。)として立地適正化計画に記載されたものをいう。)を有する建築物の開発等を行おうとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、当該行為の種類、場所、設計または施行方法、着手予定日等の事項を市町村長に届け出なければなりません(法108条1項)。

 

また、その届出をした者が、届出事項のうち一定の事項を変更しようとするときにも、当該事項の変更に係る行為に着手する日の30日前までに、その旨を市町村長に届け出なければなりません(同条2項)。

 

(解説)

都市再生特別措置法の一部を改正する法律が平成24年7月1日に施行されました。これは平成23年3月の東日本大震災の発生や将来的に首都直下地震が発生する確率が比較的高いこと等に鑑み、従前の都市再生緊急整備地域において滞在者等の安全を確保する趣旨で改正されたものです。中でも、当該地域において大規模地震が生じた際の避難経路や避難施設、各種物資の備蓄をする備蓄倉庫について、各主体が協定を締結し、それらを整備または管理することが出来る旨が定められ、当該協定に係る承継効(各種協定締結後に、新たに当該協定に係る施設等の所有者になった場合、当該協定の効力は新所有者等に及ぶ、というもの)について、新たに宅建業法上の重要事項として施行令に追加されました。この協定区域内の土地所有者等には、当該協定に定められた内容に従って退避経路等の整備や管理を行うことが求められ、整備にかかる実質的な費用負担や協定に違反した場合の違約金等の制裁も定められていることから、土地の購入者等にとって当該土地がこれらの協定区域内であるか否かは契約をするかどうかの意思決定を左右するものであり、また、その旨を事前に知りえない場合は不測の損害を被る可能性があります。そのため、これらの協定の承継効に関する規定も法令上の制限の内容として重要事項説明の対象とされました。

 

さらに、近年わが国の地方都市では拡散した市街地で急激な人口減少が見込まれる一方、大都市では高齢者の急増が見込まれる中で、健康で快適な生活や持続可能な都市経営の確保が重要な課題となっていることから、都市全体の構造を見渡しながら、居住者の生活を支えるようコンパクトなまちづくりを推進するため、市町村が「立地適正化計画」を作成することができる等のこの法律の改正が行われ、平成26年8月1日から施行されました。この改正では、市町村は、住宅及び医療施設、福祉施設、商業施設その他の居住に関連する施設の立地の適正化に関する計画(「立地適正化計画」)を作成することができることとし、この計画には、居住誘導区域(居住を誘導すべき区域)と居住に関連する施設の立地を誘導すべき区域(都市機能誘導区域)を定めることとしています。そして、この区域外において、一定の開発行為等を行うときには、市町村長への届出が義務づけられていますが、これらの届出義務については届出をしない場合等には罰則が課せられるなど、これを知らないで当該土地・建物を購入した者が不測の損害を被るおそれがあるため、この届出義務に関する規定も重要事項説明の対象とされました。