71〕〈参考〉住宅の品質確保の促進...
1.住宅の品質確保の促進等に関する法律
新築住宅の品質向上を目的に平成12年4月1日に施行された法律です。新築住宅の請負や売買にあたり、(1)住宅の性能表示制度の導入、(2)性能表示された住宅に関する紛争が発生した場合に、早期解決を図るための裁判外紛争処理機関(指定紛争処理機関)の設置、(3)住宅の瑕疵担保制度の充実が図られています。また、平成14年8月20日から、既存住宅についても、性能表示制度が実施されることになりました。
●住宅の性能表示制度
住宅に関して、構造の安定、火災時の安全、劣化の軽減、維持管理への配慮、温熱環境、空気環境、光・視環境、音環境、高齢者等への配慮の9項目(既存住宅については6項目)にわたる日本住宅性能表示基準を策定し、指定住宅性能評価機関が住宅性能評価を行い、その結果をもとに住宅性能評価書を作成し、当該住宅のもつ客観的性能をわかりやすくする制度を創設されました。
新築住宅については、平成12年10月1日から実施していますが、契約目的物である住宅にこの制度を導入するか否かは、当事者の任意とされています。
住宅性能評価書を、売買契約にあたり交付されたり、売買契約書に添付された場合には、当事者間でこの性能評価の内容を契約内容としない旨の明示がない限り、住宅性能評価書に記載された性能内容は、契約内容として合意したものとみなされます(法6条2項~4項)。
この住宅性能評価書には、設計された住宅に係わるもの(設計住宅性能評価書)と、建設された住宅に係わるもの(建設住宅性能評価書)があります。後者の交付にあたっては、前者に表示された住宅性能が発揮されるように中間検査および完了検査を実施します。なお、既存住宅の場合は建設住宅性能評価書のみです。
●裁判外紛争処理機関
性能表示(建設住宅性能評価に限ります)を導入された住宅に関し、紛争が生じた場合、裁判による解決では長期化が予想されるため、裁判外紛争処理機関(指定紛争処理機関)において、あっせん・調停等を行うことを認め、早期・迅速な解決をしようとするものです。
平成12年10月1日から、全国の弁護士会がこの指定紛争処理機関として指定を受け、弁護士と建築士等が委員となって、あっせん・調停を行っています。
●瑕疵担保制度の充実
売買の目的物に隠れた瑕疵が存在した場合に売主が買主に対し負担すべき瑕疵担保責任の行使期間は、目的物が新築か否かにかかわらず、また、瑕疵の生じた部分のいかんにかかわらず、原則として買主が瑕疵の存在を知ったときから1年以内です。ただし、当事者の特約で、この期間を変更することは認められていました。この変更特約について、売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合には、宅建業法で「引渡から2年以上」とすることが認められていたこともあり、実務上のこの期間に関する特約は「引渡後2年」程度というものが多く見られました。新築住宅の売買の場合、本法により、強制的にこの期間を目的物の引渡から10年以上とすることにしました(ただし、新築住宅の主要構造部分に限ります)。
また、担保責任の内容として売主に補修責任も認められました。新築の請負契約においても、本来、民法上住宅の構造によって、請負人の担保責任の期間は、引渡後5年または10年となっていましたが、本法により住宅の構造にかかわらず、引渡後10年以上となりました(ただし、新築住宅の主要構造部分に限ります)。
2.特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律
この法律は、国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤である住宅の備えるべき安全性その他の品質または性能を確保するため、住宅の瑕疵の発生の防止上重要であるとの認識の下、新築住宅の購入者等を保護する目的の法律で、平成20年4月1日に施行されました。
概要としては、(1)建設業者による住宅建設瑕疵担保保証金の供託、(2)宅地建物取引業者による住宅販売瑕疵担保保証金の供託、(3)住宅瑕疵担保責任保険法人の指定及び住宅瑕疵担保責任保険契約に係る新築住宅に関する紛争の処理体制等について定められています。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)と相まって、住宅を新築する建設工事の発注者及び新築住宅の買主の利益の保護に寄与することを目的としています。
なお、下記の資力確保措置の義務付けの履行については、平成21年10月1日の施行です。
●資力確保措置の義務付け
新築住宅の建設を請け負う建設業者、売主として新築住宅の販売を行う宅地建物取引業者は、一般消費者に対する特定住宅瑕疵担保(住宅建設瑕疵担保、住宅販売瑕疵担保)責任の履行の確保のために、資力確保の方法を行う必要があります。
●資力確保の方法
資力確保の方法として、次のいずれかを行う必要があります。
●保証金の供託
●保険契約の締結(住宅瑕疵担保責任保険法人との契約)
保証金額(保険額)・・・各基準日(毎年3月31日および9月30日)において、基準日前過去10年間に引き渡した新築住宅の合計戸数に応じた額(算定額は、施行令別表に従った金額)の保証金の供託か保険契約の締結によります。
届出義務・・・保証金の供託または保険契約の締結後、これらの状況について、基準日から50日以内に届け出なければ、新たな新築住宅の売買契約の締結が禁止されます。